SatoshiFujiwara

DUBHOUSE:物質試行52のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

DUBHOUSE:物質試行52(2012年製作の映画)
4.4
ジャン=マリー・ストローブに『おお至高の光』という短編があって、そこでは音楽にエドガー・ヴァレーズを流しながら延々と観客に何も映っていない黒味を見せ続けるという荒業がかまされるのだが、ストローブが目指すものとは違うが本作冒頭からしばらくはそれを連想した。その漆黒の中に次第にドローイングが見出されてくる時の何の情動にも還元されない不意打ち的な衝撃。次第に浮き上がって来るインスタレーションもまた深い闇と光の対比の中に捉えられて、映画の本源である「光と影」を極めて単純な手法で観るものに突きつける本作は、その単純さゆえにラジカルな作品となりえているように思う。「建築が生み出す闇を捉える」との意図のもとに撮影されたという本作は、映画と建築、もっと言えば表現されたもの/されなかったものという全ての表象行為の本質的なものを炙り出していてとても味わい深い。磯崎新の「反建築」的な概念も連想したし、こーゆー押し付けがましさのない中に観客に多様なことを考えさせる作品は尊いし好みです。
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