【過去に観た映画】2013.2.16
2011年に他界した名優・原田芳雄が生前に企画を温めていたという映画。
エンドロールには「特別協力」で若松孝二監督のお名前も。
原作は船戸与一の短編小説「夏の渦」(文春文庫「新宿、夏の死」所収)。
脚本に「パッチギ!」「フラガール」の羽原大介。
この脚本、泣かせないわけがない。
新宿のショーパブでニューハーフやゲイというマイノリティな
人たちが織り成す人間ドラマ。
もう少し毒っ気があるかと思っていたが。
ストレートで、枝葉をそぎ落とした、スコーンと太い幹だけを
見せてくれた。
その分、テーマがゆるぎない。
「自分に正直に生きる」ということは、素敵なことだけど、
どこかで誰かを欺かなければならない。
それは、その人を想うがゆえのことだ。
一人のニューハーフの死は、そんな自分に正直に生きているゲイ仲間達に自分の生き方を突きつける。
死んだら終わりだが、その「死」をもって受け入れてもらうことに奔走する。
性転換して女になった息子の遺体の引き取りを拒否する父親。
でも、ゲテモノ息子と言われて村八分にされた家族がいて、
父親の辛さも痛いほどに解る。
ゲイ仲間達が運んできた棺桶に泣きすがる母親の姿は
誰の涙も誘う。
「どんな姿になっても私がお腹を痛めて産んだ息子だ」と。
そして、「こんなにきれいに化粧してくれて ありがとうね」とゲイ達に礼を述べる母親。
でも、その後、棺桶を居間に運び、父親が縁側で
静かに座っているシーンの方がぐっと迫って、涙がとまらない。
山本太郎がゲイのミロ役で主演。
田舎の母親に電話をかけるシーンもとてもよかった。
泣いてることを悟られまいとし、強がるが、
だんだんと故郷の言葉になっていく。
このシーンは、カメラもスタッフも隠れて、よーいスタートを言わずに山本太郎の一人芝居でカメラを回して撮影されたとパンフにあった。
俯瞰で新宿のビルが映るシーンにミロの台詞がかぶるのも
山本太郎のアドリブだったそう。
山本太郎の演技にひきこまれた。
ゲイ役は本モノではなく、全て役者が演じている。
ニューハーフの役だけは本当の女性が演じているが、
この女優さん、この役の為に20kgのダイエットをされて挑んだそう。
ムチムチの体当たり演技だった。
撮影に使われたショーパブは実際に営業していたお店で、
雰囲気があった。
11日間で撮影されたというこの映画、役者たちの熱い想いが伝わる。
上映後にゲイ役とニューハーフ役の方が突然の舞台挨拶。
役者たちが各地を宣伝に回っているのだとか。
上映後のサプライズはゲイ役とニューハーフ役の挨拶。
映画館前でお二人の写真を撮らせていただく。
左がペペロンチーノ役の舞台役者さん齋賀正和氏。
右がニューハーフのノリピー役の女優さん。
お二人ともサービス精神旺盛で、この映画への愛も
いっぱい感じさせてくれた。