垂直落下式サミング

EDENの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

EDEN(2012年製作の映画)
2.5
山本太郎を筆頭に役者陣の生き生きとした演技は非常に心地よく感じるのだが、この映画の「オネエ」「オカマ」というものの描き方にステレオタイプな差別意識が根底にある気がしてならない。
オカマという設定がキャラクターに社会的少数派という物語上都合のよい肩書きを付与するための飾りでしかなく、描かれる事柄やメッセージは非常に押し付けがましいため、キャラクターへの共感を阻害する。
そんで、負の部分も含めて世の中を肯定的に捉えた前向きな映画のはずなのに、その価値観に同調してこない他者に対しては非常に冷淡で困った。
武正晴監督の『百円の恋』とか『インザヒーロー』は好きな感じの映画だったが、主人公たちを純粋なものとして設定しているのに対して、不理解者たちのことはただ単に嫌なやつとして書き割り的に描くのが気に食わない。
『百円の恋』の100円コンビニの店長や、『インザヒーロー』のレストランのクレーマーおじさんの描写は、非常に薄っぺらでいい加減な人物描写で、あの人たちのキャラ造形が喜劇的だったらいいんだけど、現実に中途半端に密接してるのが気持ち悪い。作り手が嫌悪感を持っている、もしくは見下しているのがハッキリと物語にあらわれているから、気分が悪くなってしまう。こういうところがあるせいで、武正晴の作品は素直に好きになれない。
ご高説を垂れる系の台詞も嫌だ。登場人物たちが不意にみせる「○○を代表して」良きことを主張しているかのような言動は、目の前にいる人ではなくて「社会」とか「行政」に言ってやったぜって感じで恥ずかしい。
別に個人のセックスやジェンダーっていうのは、必ずしも他人から認められなければならないものでもないし、それを同一の社会性質を持った人間全員が望んでるわけでもないと思うのだけれど…。
こういった題材に中途半端な正義感でもってフェミニズムだとかマイノリティの問題を持ち込むと、作品の主張がうるさくなる。差別を描いているのに、これを描く側が持っている偏見に無自覚であるのが透けて見えるので、一定数の人から反感を買うタイプの物語だと思う。