takeratta

耳をかく女のtakerattaのネタバレレビュー・内容・結末

耳をかく女(2012年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

事前知識無く鑑賞。

産んだ母に捨てられ育ち撮影者になってゆく青年が、惹かれた女性にみたものを、美しく描いた作品。


人により評価は分かれそうだが、自分は共感する部分が多かった。
好きとか、そういうことではなく、そういう全てがパーフェクトな方は、きっと健常で生きて来れたラッキーな方で、
批評してこき下ろしたりも平気にできるんだろうな思う。


自分に翻して我が身をみれば、捨て子、施設育ち、苦学生で高校から大学学部、院から、
別分野の大学院再びコロナ禍以降、3つめの院に復学と

高校から働かないと学費と奨学金の返済がまかならない中で、
働き生きる事の大変さは、生々しい現実だと感じた。就活しましたね、雇われたくて。

やらされる仕事に飽きて、仕事を己が作る方に自分が興す側になって、お給料を払う方の大変さを今、所有する数社で痛感してる。

従業員やその家族や親類を、喰わせていかねばならない。
生きるって大変で、お互い様で、何となく生きられない現実はある。


映画の本編に戻って。

人は女性に母性を求める事もあろう。
人間だもの、
肉欲的な形で優しく愛を確かめ合う事も
パートナーであれば、きっとあろう。

でもそれって、
他者が居て出来る事なわけで。

家族や奥様や旦那さま、御子息やご来場が居られるハッピーな方には、
気だるい幼稚で弱い映像と叩かれそうで、少し心配。

作品の世界観と、映像美、撮影技法や技術は、よい構図や力量を感じさせるシーンがいくつも有り、

一撮影表現者として観ると、あんなにイケメンではないが、
己も撮影者として時に、苦悩や不器用に重なるところもあり、没入感はあった。


主演女性俳優、桜木梨奈さん演じる、耳をかく女は、マイノリティ(聴覚障害者)。
偏見無く鑑賞願いたい。

(或いは自分がマイノリティ側当事者だったら、でも良いかもしれない)


マイノリティが現代を生きる難しさは、
自分は震災後に、
己は車椅子になり、心臓も病み、機械が体内に入り、それ以前から鬱病を抱え、残念ながら、手帳持ちでも、

会社を運営してても、
差別的な人事戦略を未だに持つ中小企業とお仕事で取引することもあり、
あんな人事の人たちには、
本作品はどう見えるのか?観て頂き、
訊いてみたいかも。


映画デビュー初主演主役抜擢で、
脱げる、脱いでも美しい曲線美は、
透き通るほどの愛おしさを
ファインダーで切り取れてある奇跡な作品。

女性は何歳になっても、
裸体はそれぞれに美しいもの。

美しく生き日々美しく老いること、
その前に日々を生きる事を、
気だるく思わずに、
死して看取る家族のあった幸せまで、駆け抜ける青春と、
すれ違う世代感を感じ取れると、
この作品の素敵さや、演者さまたちの、表現をよく理解出来ると思う。

(だったらお前やってみろ!的な。端役俳優な己には出来ない、圧巻幾つも美しくはありましたよ)


叩かれ恥いるために、己は産まれてきた訳でも、本作品も映像化した訳でもないはずだろう。

好き嫌い評価は分かれて良いと思う。
人それぞれ。

作品を移し鏡に、
人は何を自己の中と作品から得ることが出来るか?、

そこが映像や小説、脚本から、
他者の人生を追体験出来るか、出来ないダメか?

むしろ鑑賞者側の方が、人として、人たるあり方を常に試されていると、いつも思う。

俳優魂がこもっていて、美しく描いた素晴らしい作品として高く評価したい。


桜木梨奈さんは、もっと評価されるべき女性俳優と実感出来た。

本作のち、
クドカンさんの主演他、劇団/ダンサーから女性俳優へ。
華奢だけど、とても綺麗な瞳と演技力を持った若い優れた役者。

今後も更なるご活躍を、そっと期待したい。

-------
堀内博志 監督・脚本作品(2012)
配給 : パーフェクトワールド
製作 : 海津昭彦
プロデューサー : 日原裕子
ラインプロデューサー : 植田中
音楽・主題歌 : Satomimagae
助監督 : 佐々木利男
takeratta

takeratta