Eike

マリーゴールド・ホテルで会いましょうのEikeのレビュー・感想・評価

3.3
幾つになっても「自分探し」は大変だぁ。

"Dame"ジュディ・デンチを筆頭にビル・ナイ、トム・ウィルキンソンやマギー・スミスといった英国映画界のシルバーエイジ組(重鎮)が顔を揃えた作品。
監督は「恋するシェークスピア」で知られるベテランのジョン・マッデン。

それぞれに訳あって英国からインドに渡った6人の熟年世代の人々。
物価の安いインドで悠々自適の時間を過ごす算段で「高齢者向けホテル・マリーゴールド」に集います。
しかしそこは誇大広告のそしりを免れない宿だった…。

この設定から伺えるように派手さは微塵もないお話ではありますが、安定感があってじっくりと楽しめる作品になっております。
さすがにキャリアの長いベテラン勢を揃えただけあって登場人物たちの息遣いがきちんと伝わるものになっており、良い意味で映画らしさに満ちております。
ただ作品としては彼らの存在感と舞台設定(インドの下町)のエキゾチズムに少々下駄を預け過ぎの感があってお話そのものにもう少し弾んでいただきたかったのも事実。
異文化の環境に置かれた英国人たちのカルチャーショックの描き方についても少しステレオタイプ過ぎる気配も。

物足りなさを覚える理由の一つはこれほどのベテラン勢を揃えながら、彼ら同士による競演は期待ほど見られないんですよね。
ほとんどは主人公たちが苦労しながらこの異文化環境に次第に適応して行く姿を描くことに費やされており、彼ら同士の交流自体にはあまり比重が置かれていない。
インド社会や現地コミュニティとの交流ももう少し深みのあるエピソードが欲しかった気がいたします。
個人的にはやはり英国を代表する二大女優、デンチ様とスミス様のガチンコ競演が見たかったかな。
その反面、英国判事の職を辞して渡印して来たトム・ウィルキンソン氏を巡るエピソードについては中々切ないものがあって良かったですね。
その背景に関しては時代と文化のせめぎ合いが込められていて、ちゃんと現代らしさも付与されていて見応えがありました。

しかしやはり、これほどのベテラン組を揃えて一本の作品に仕立て上げられるのはやはり英国映画ならばこそ、でしょう。
ハリウッド映画ならまずこの地味な企画自体が通るとも思えませんし…。
企画段階ではピーター・オトゥールとジュリー・クリスティーもキャスティングされていたそうです(これは見たかったかも)。
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