【これが新しい「板尾の嫁」か】
人形に魂が吹き込まれる話はたくさんあるが、ダッチワイフが「心」を持つ話ってあったっけ?なかなかの所を攻めてくる。
もともと人間じゃないので何してもいい相手。だが「心」を持ってしまうとそうもいかない。だが相手は人間ではない、本来的に気を遣う必要はない。
何もわからない幼子の様に振る舞う空気人形、のぞみ。でも幼子は人間だがのぞみはあくまで人形なのである。
ペ・ドゥナ演じるのぞみは「ワタシ、心を持ってしまった」と言う。のぞみは「意思」を持ったのではなく「心」を持った。これはのぞみ自身がどうしたいこうしたいという「意思」を持ったのではなく、相手にされた事に対して感じる「心」を持ったのだという事。
だからあくまでものぞみ発信ではなく周りの人がのぞみとどう関わるのか、のぞみを通じて人がどう感じるのか、どういう行動を取るのか、というところが描かれている。
人と人の関係は双方向だけではない。一方通行だったり自分勝手だったり、結局自分発信なのである。そういう事に気づかされる。
家族を描いてきた是枝監督としては異色作品だし、是枝監督ならもうちょっと掘って欲しかったという期待と物足りなさはあったが。
片言の日本語を話すのぞみ役を韓国人のペ・ドゥナに決めたキャスティングの勝利。そして板尾をキャスティングしたセンス!
若干のコント感が出るところがこの作品には必要だし、それが絶妙なバランスで出来るキャラと演技力は板尾だからこそ。
是枝監督というよりも、色んな監督で撮って見比べたいと思える作品かと。