あきらっち

クロエのあきらっちのレビュー・感想・評価

クロエ(2009年製作の映画)
3.3
官能サスペンスに分類される本作、ジュリアン・ムーア、リーアム・ニーソン、アマンダ・セイフライドと豪華キャストに惹かれ鑑賞。
タイトルとなったクロエを演じるのはアマンダ・セイフライド。
眼ぢからに特徴があるとびきりの美貌の持ち主だが、何処かミステリアスな表情が人物像に深みを与え、只者ではないオーラを醸し出す。そんな彼女が娼婦役で大胆な濡れ場を演じた事にとても驚いた。抜群のプロポーションにクラクラ…
てっきりリーアム・ニーソンが彼女の妖艶さにのめり込む悲しい男の性を描いた作品なのかと思いきや…

男達の醜い面々を知るクロエが、打算のない心の繋がりを求め辿り着いたその先…

娼婦であるからこそ辿り着いた境地があるだろう。
それとも既に辿り着いていたからこそ、割り切った娼婦を演じていただけなのかもしれない。
良いも悪いも答えなどない。

そしてもう一つ。
人は老いを避けては通れない。
老いに引け目を感じてしまう、悲しき人間の性。
誰もが羨む裕福な家庭、おしどり夫婦なのに…
ジュリアン・ムーアが演じるキャサリンの孤独が痛々しい。

老いて尚、魅力を増すリーアム・ニーソン。
男に限らず、人生経験に裏打ちされた自信と貫禄が放つ輝きはとても眩しい。
キャサリンだって十分魅力的である筈なのに…
傍らの光が強烈な程、周りの輝きは色を失い、心に影を落とす者たちが居る。
これもまた人間の悲しき性ということか…

綺麗で洗練された映像の一方で、ドロドロとした愛憎劇は、まるで人間の表と裏のよう。
残念ながらミステリアスなクロエの心の闇が描ききれておらず、ミステリー作品としては個人的には深い余韻に浸れるものではなかったが、ジュリアン・ムーアの表情で語る演技は多くの女性の共感を得るものだったに違いない。
リーアム・ニーソンは渋かったが、この映画では脇役だ。
何だか勿体ない気がするが、女性2人を引き立てる為のあえての演出なのかと。

官能の部類にカテゴリされてはいるがエロさはさほど感じられず、身体より、満たされない心の交わりを描いた作品。
結末のあっけなさは少々拍子抜けだった。

リメイク元の「恍惚」も併せて観てみたい。
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