ユカリーヌ

藁の楯のユカリーヌのネタバレレビュー・内容・結末

藁の楯(2013年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【過去に観た映画】2013.4.26

初日に はりきって観るのもどうかと思うが、犯罪心理、異常者に興味がある私にとっては、
この映画は予告を観た時から気になっていた。

原作はあえて未読で、映画のラストを楽しみに
スリリングを味わった。

まずは 鉄ヲタかっ!

って言う位、新幹線が大活躍する派手なアクションと
大掛かりなロケに圧倒される。
お金がかかっているなあとか、コレ、日本での撮影は
無理だなあとか、いらぬことを思うほど。

ダークな韓国映画のような容赦のなさ、救いのなさ。
これでもかというほど、“異常者”は観客を苛立たせ、
殺意を抱かせる。

藤原竜也演じる犯罪者の“クズ”っぷりには、
最後の最後まで気が抜けない。
徹底している“異常者”っぷり。

金で魂を売る人々のなんと多いこと。
アンタも君までもかっ!と。
それは例え家族のためであっても、いとも簡単に人を殺す事を“実行”しようとする。

金のためであれ、復讐という感情であれ、殺意を抱くのを
留めるのは、理性ではなく、その人自身の「プライド」でしかない。

周り全てが敵で、移送する仲間五人の中にも
裏切りものはいて、ノンストップで次から次へと
様々なことがふりかかり、ほんの少しの予断も許されない。

最後まで皆が「悪」に見える。
しかし、「“善”のためなら“悪”をも殺す」という
のが はたして悪なのか善なのかもわからなくなってくる。

松嶋奈々子は笑顔を封印し、非情なまでのSPを演じる。
この松嶋奈々子をもってしても、オバサンよばわりするクズ。

児童ポ○ノや虐待に厳しい今、この映画、最小限のショットと
台詞で、クズの少女への冷酷非道っぷりを示している。

心を殺し、情を排除してしまったものはどこまでも冷酷だが、
愛や情にあふれるものが最後は強いのかもしれない。

山崎努の老いぼれっぷりは演技だよね。
でも、さすがに、存在感のある悪役ぶりだった。

大沢たかおは やはり、かっこよかった。
腕力が強いと言うよりも精神力の凛とした強さ。
自分との葛藤の中で戦い続けた。

甘さのかけらもなく、全編ビターテイストだが、
最後の最後に少しだけ「希望」が見え、
大沢たかおの笑顔に救われる終わりではあったが、
ズッシリ、どよんと胸に重くのしかかり、
後味のよくない映画だった。

でも、ツッコミどころや笑いドコロも少しあるので、
一緒に観た人と、ツッコミあったりするのも面白い。

原作小説は漫画家だった木内一裕氏で映画監督でもある。
パンフによると、自分が撮りたかった企画だが、
お金がかかるので、小説にして映画化オファーを待ったとある。
「自分が撮るなら、予算が少なくても面白く撮るが、
 人に撮ってもらうなら、予算が潤沢にある大作で本気の
 企画でないとOKを出せない」とも語る。

やはり原作から脚本の段階でかなりアレンジされているらしく、原作者としては、葛藤の末、三池監督に
「とにかく新幹線を出して、すごい映像を見せて」ことを
重要ポイントにあげたとのこと。

映画を観終わったので、
物語の中に救いや希望が必ずしも必要ではないと語る
原作者の救いのない原作小説を読もうと思う。
ユカリーヌ

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