明石です

ジャックナイフの明石ですのレビュー・感想・評価

ジャックナイフ(1989年製作の映画)
4.8
ベトナム戦争から帰還して以来疎遠になっていた男2人が友情を温め直す話。片方はただ忘れたがっていて、もう片方は記憶を留めたまま懸命にもがく。それで気持ちがすれ違い、互いに傷つけ合う。戦争の遺した記憶への向き合い方は人それぞれで、同じ苦しみを共有した者同士でさえその捉え方は全く異なる。それが軋轢を生むこともあれば友情を育むこともある。

PTSDと一言でいえばそれまでだし、戦場で育んだ友情というと聞こえはいいけど、消えないトラウマを抱えて何十年も生きるのがどれほどの苦悩かというのは経験した本人にしか知り得ない。2人の不器用な友情は美しく、そして話の構成も素晴らしい、文句なしの良作。こんな映画を撮れたら死んでも良いだろうなと(映画監督でも何でもないのに)思ってしまったくらい。戦争と間接的に関係する映画では『ソフィーの選択』が一番好きでしたが、本作で鮮やかに更新された。

「いつも妻にこう訊かれる。何を悩んでるの?って。どう言えばいい?子供に何と言えばいいんだ?」という帰還兵の台詞が脳みそに突き刺さったよ。。

「ボビーは言っていた。ある種の女は輝いている。触れられると、恐怖や疲れも吹き飛ぶ。隣にいるだけで落ち着く。いつかそんな女に出会える。そしてその時人生の意味を知るだろう。誰にだってその権利があるんだ」という終盤の台詞にも胸を打たれた。そのことについては多分わたしも知っている、、気がする。
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