この頃はまだキューブリック独特の目の視点やシンメトリー、横移動は見られないものの、音楽の使い方はこのころから非凡なものがある。
男の大合唱と戦争はやはり絵になる。
加えてラストシーンの爆発の連写・連撃が不謹慎ながらも美しさを感じさせる。
これは人間に破壊衝動が宿っているからなのだろうか?
ある将校の誇大妄想が
ヒトラーに狂信していたあるドイツ人科学者の内なる欲望を炙り出す。
右手をしきりに上げそうになる演出がそれである。
ナチスを滅ぼしたはずのアメリカとソ連にナチスの精神が宿っているという暗示。
人間は普遍である。
キューバ危機など、核戦争がリアリティをもってよく想像されていた時代だったとはいえ、今の時代もいつこうなってもおかしくない。
恐ろしいブラックユーモア。