何はともあれピーター・セラーズの怪演ですよ!1人3役だなんてどんなだ?!しかも主要キャラばかり。それを声色やアクセントから身ぶりに至るまで完璧に演じ分けているのだから、脱帽する他ない。久しぶりに観て驚いたのは、ストレンジラブ博士の登場時間が短いことだ。タイトルロールにもかかわらず、中盤になるまで台詞もなく名前すら分からないままだが、会議のメンバーに混じって遠くに映るその姿からは明らかに異質なオーラを発している。終盤の暴走ぶりには腹を抱えて笑った。
確かイーサンは影響を受けた作品として『博士の異常な愛情』を挙げていたが、コーエン兄弟のユーモアのセンスはキューブリックと近いことがよく分かった。基本的にシニカルであるし、電話代の小銭を巡るやりとり、大統領と首相のお互い譲らない会話等の馬鹿馬鹿しさはコーエン兄弟の作品でもよく見られる。