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博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

米ソ冷戦のもと、核戦争の脅威が身近だった時代に作られた、とても不謹慎な笑いのブラックコメディ。
空軍司令官が突如錯乱し、核攻撃の命令を独断で出したことによって、とんでもない事態へと進んでいく。
核攻撃爆撃機を呼び戻す暗号を、居合わせた英国軍人がなんとか解析して米国大統領に伝えたものの、たった一機だけ連絡が取れず、攻撃目標にまっしぐら…

英国軍人、米国大統領、元ナチの科学者と3役を演じたピーター・セラーズの変幻自在な演技は見もの。

本当は戦争したくてたまらない将校たち。
連絡がつかないからといって、その後のことを考えもせず、ラストに核を投下してしまう米国兵士の思考判断力の無さ。
たった一機の爆撃機のために人類が滅亡してしまう馬鹿馬鹿しさ。
ブラックにも程がある。

だが、核攻撃のボタンを押すのは人間には荷が重すぎる、ならば自動報復システムにしようというソ連側の発想は現代にも通じる先見性がある。
また元ナチの科学者が提唱する核兵器から避難する「地底生活」、それは核シェルターであり、その後の核戦争後を描いたSFでは必ず登場する。
現実でも市販されて普及し始めるのだから、この映画が残した功績は大きいのかもしれない。

戦争を起こせば自滅する。
核兵器を弄び、その犠牲を軽んじた発言。
世界唯一の被爆国である日本人から見れば、とても不謹慎で時折怒りすら感じるが、全てはラストの「原爆ロデオ」に視覚的に象徴される。
「それでも戦争をやめない人間が、地球上で最も馬鹿な生き物である」…と。

人類を俯瞰して見るスタンリー・キューブリック監督の視点に才能を感じずにはいられない作品である。
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