T太郎

さよならドビュッシーのT太郎のレビュー・感想・評価

さよならドビュッシー(2013年製作の映画)
3.5
720
以前、テレビで放映された時にチラリと観た事がある。
しかし、ほとんど忘れていた。

あまり邦画を観ない私が、なぜこの作品を観たのかというと原作が好きだから、である。

中山七里の傑作ミステリー小説が原作だ。
読みながら涙しつつ、驚きをも味わえる実に素晴らしいミステリーなのだ。

漫画にしろ小説にしろ、映画化された作品はクソミソかつボロカスに言われがちだ。

私もその気持ちはよく分かる。
原作の主題やイメージをぶち壊していると思われる作品が多々ある事は確かだ。

しかし、映画は映画であり原作とは別物である。
様々な制約の下、原作に敬意を払いつつ全く別物の娯楽作品を創り出してくれているのだ。

虚心坦懐に、あくまで一映画として、その作品を観る心の余裕が必要であろう。
乱暴な言い方になるが、原作に惑わされず映画として楽しめるかどうかが大事なのだ。
・・知らんけど。

さて、この作品だ。
僕はとても面白かった。

前述の主張と矛盾するかもしれないが、原作の良いところをきっちり残してくれていると感じたのだ。

特に主人公の叔父のキャラクター。
一見、強欲でだらしない男なのだが、ちゃんと人情味ある好人物に描いてくれている。

彼をただの俗物に描いていたなら、私はこの作品をクソミソかつボロカスに叩いていたであろう。
(うん、矛盾してるな)

ストーリーを紹介する事はしないが、どんでん返しを楽しめる作品、とだけ言っておこう。

・・でも、色々言いたい。
ばらしたい。
ぶちまけたい。

アカンアカン、原作にも迷惑をかけてしまう。
やめておこう。
私とした事が・・・

ピアニストの清塚信也が意外といい演技をしている。
岬洋介役だ。

岬洋介は中山七里作品のシリーズ探偵だ。
他にも探偵役を務めた作品があり、父親も別シリーズに登場したりしている。
今回、ミッキー・カーチスが演じた、車イスのおじいちゃんが主人公の作品もあるので、気になった方は是非ともチェックしてみてね。

実は色々と粗がある作品だ。
緻密に練り上げられた推理小説を映画化すると、どうしてもこうなってしまう。
説明不足になってしまうのだ。

これは致し方ない。

ちっちゃい事は気にしない、ワカチコ精神で観ていただきたい。
T太郎

T太郎