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ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュのNMのレビュー・感想・評価

2.0
今年76歳で没するまでフランスの国民的女優として人生を送ったジェーン・バーキン主演。
ゲンズブールはこの作品が初監督で、後にジェーンと事実婚。
1975年完成。日本では1983年に公開されたが様々な修正が入れられていた。2021年には完全無修正版が出ている。

性と自由を模索して刹那に生きる若者たち。

ジョニーのような生活をしている若者はアメリカ映画等に時々出てくるが、現代にあってとてつもない不自由さに恐ろしくなる。
友達も恋人も、頼る人もない。お金も知識もなく、逃げることもできない。その土地に縛り付けられた状態。

逃避行している男たちもまたいつ壊れてもおかしくない暮らしであり、これだって必ずしも自由とは言い切れない。

どこかに行きたいような気がするが、どこに行ったらいいのか、具体的に自分が何をしたいのかも分からない。ただ息苦しさと焦燥だけがある。
人を愛してみたい。必要とされてみたい。愛が何かは知らないが、激情を感じて自分が生きているという実感を味わってみたい。

不確かなチャンスでも今より状況が変わるなら掴んでしまう。
それが明日どうなるとも知れない状況でも、その日を精一杯輝こうとする。一瞬でいいから輝いてみたい、もう二度と光れなくなっても。

現代人はこんな風に自分を全て投げ出して捧げるような恋愛をするような人はかなり減っているだろう。自分の尊厳を大事にするようよく教育されてきた。だがもしかしたらそうでない生き方があっていいのかもしれない。

一般的常識で観ればきっと、パワハラだ、暴力だ、汚い、痛そう、かわいそう、やめたらいいのに、という反射的感想がどんどん出てきてしまうだろう。そんな次々浮かぶ当たり前の発想をいかに排除しつつ映画のなかの世界として観られるかが鍵かもしれない。

個人的には正直言うと難しかった。生活や心にゆとりがある状態じゃないと難しいのだろうか。いろいろなことを受け入れる心のバッグの蓋が固くなっていて必要なものしか入れたくなくなっていることに気づく。昔はいろんなことを受け入れられたはずだから。
その意味で、特に若い人におすすめの作品。
私ももっと歳を重ねてから観ていたら、なんじゃこりゃと途中でやめていたかもしれない。もう既に十代の頃に比べたら途中で挫折する作品が増えているような気もしてきた。
色んな映画を観て常にバッグの口を広げておきたい。勝手に広がることはないだろうから。もう使えない道具をしまいっぱなしにしていないで、新しいものを入れ続けないとそれはただのゴミ袋になってしまう。

それともう一つ、映画において私を不安にさせる要素。
「作品には不適切な表現が含まれますが、……」という注意書き。
これは個人的には、その表現を全て見つけられなければあなたは現代常識を持ち合わせていませんよというテストを受けさせられるような気分になるので、無意識のうちに頑張って探してしまう。それよりも本題に集中しないと。
私は「映画が分かる人」より「常識を知っている人」を目指してしまっているかもしれない。
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