kane

undoのkaneのレビュー・感想・評価

undo(1994年製作の映画)
2.7
岩井俊二監督の映画はどうも苦手だが、この作品は比較的好きなほうだ。

映画初監督作品ということもあり荒削りな印象を受ける。
突っ込みどころを先に片付けてしまおう。
こんなアパートないだろ。あんだけ部屋改造しといてペット禁止はないだろ。亀は1匹でいいだろ。あんな医者と病院どこにあんだよ。オシャレすぎだろあのタクシー。強迫性緊縛症候群で気まで触れるのはおかしいだろ。岩井俊二精神病好きすぎだろ。病気で表現するの安易すぎだろ。山口智子とキスしすぎだ豊川悦司!ずるいぞ!

と、最後に私情が漏れてしまったがとりあえずスッキリしたのでレビューに進める。

やはり岩井俊二は不必要に映像を美しく描きすぎだと思う。美麗な画が映像に説得力を持たせると効果的な使い方もあるが、岩井俊二の場合、リアリティを超越してしまっているため、逆に説得力を削いでしまっているように感じる。(気にならない人は気にならないのだろうが)
ただ、この作品ではあまり気にならなかった。それは今作に登場人物がいないからだと思う。いや、いることにはいるのだが、人間ではないのだ。

この映画は観念そのもので、登場人物も観念の権化として扱われている。妻は愛されたいという欲求の権化で、夫は愛したいという欲求の権化だ。そのせいか、登場人物みな、台詞があまりにも直接的で、物語の核心を突いている。観念同士の会話なのでそうなるの仕方ない。
下手するとチープになってしまう話だが、非現実的な美しい映像と観念的世界がマッチしているため成立している。

夫は最後まで妻を愛することできなかった。もしくは、妻の欲求を満たすまでには至らなかったのだろう。どんなに要求に応えても、欲求を満たすものは最初から別のところにあった。
妻のラストの台詞は最高だが、その後のシーンは完全に蛇足。あそこまで親切に説明する必要はない。

良く言えばストレートで分かりやすく、悪く言えば観客を舐めてる感じも否めない。また、観念を現実に置き換えて語るのが映画なのではないかとも思うので評価はしがたいが、短い映画の割には濃密でコスパの良い作品だと言える。
kane

kane