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undoのnaoのレビュー・感想・評価

undo(1994年製作の映画)
3.9
募る寂しさから、身の回りのあらゆるものを縛るようになってしまった妻の萌実と苦悩する夫の由紀夫。

屈折した愛に見えるけれど、実は「縛る」「ゆるむ」というのは愛という観念においてはとても根本的なものなのかもしれないと思いました。夫婦や恋人というものは多少なりとも相手を縛ることで成り立っているものだから。
二人は、いつの間にか互いの心を縛り合えなくなってしまっていたのだと思います。だから、萌実が繰り返す「ちゃんと縛ってよ」という言葉がとても悲しく聞こえました。

また、時おり映し出される空が印象的でした。空というと開放的なイメージですが、この作品ではその空にも常に電線が張り巡らされています。二人が空のしたでキスをするシーンがありますが、そのときもやはり空には電線があり、愛とは互いを縛り合うことだという本作の主題が暗示されているように思えました。
最後、萌実が物理的に由紀夫を縛ったのは、心で縛り合えなくなった夫婦という関係への彼女なりの別れだったのかもしれません。
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