かわさき

ゼロ・ダーク・サーティのかわさきのレビュー・感想・評価

ゼロ・ダーク・サーティ(2012年製作の映画)
4.3

 キャスリン・ビグロー最新作『デトロイト』に向けて

 米国内で議論の嵐を呼んでいた『ゼロ・ダーク・サーティ』。映画や芸術作品はこうあるべきだと思う。「ツール」というと聞こえは悪いかもしれないけれど、映画は娯楽のためだけでなく議論のきっかけになっても良いはずだ。

 拷問の有無や主人公が実在するのかなんかは、正直どうでもいい。ラストシーンが全てだ。一部では親米プロパガンダ映画だとか言われたらしいが、全くそんなことはない。この映画が提示しているのは、アメリカが何度も直面している「問い」そのものである。

 問題は本作が公開されてから既に5年以上月日が流れていながら、全く何も進歩していないところだ。すなわち、映画は社会に全く歯が立たないということ。それでも作家たちはカメラを回し、筆を執り、演技をする。ここ2・3年のうちに何度絶望したか分からないけれど、彼らの100分の1ぐらいは熱意を持ち続けたい。

 
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