一休

TOKYOてやんでぃの一休のレビュー・感想・評価

TOKYOてやんでぃ(2012年製作の映画)
5.0
常に観たい映画は何かしらあるオイラなんで、上映情報を眺めながらチェックした映画を『覚書き』としてmixi日記に上げるわけだが、そこに落語好きの女王様が食いついてくるとは、お釈迦様でも気が付くめぇ。
そんなわけで、この頃流行のミニシアターで上映される【TOKYO てやんでぃ】を夕方16:35の回から観ることにした。

K's cinemaというとこは、初めて入る劇場だったのだが、さすがに新しいタイプのミニシアターで、シートとスクリーンのバランスが非常に良い。
それもあってか、この劇場でしか上映されない小品だというのに、若いカップルさんなんかが多く、80席ほどの席が3/4ほどは埋まっていた。

「そんなのどこで上映すんだい?」というようなドキュメンタリー映画のCMを10分ほど観て、いつの間にか本編へと入る。(´ー`)┌フッ

落語や噺家に詳しい人は知っていると思うが、落語家になるには、まず真打ちと呼ばれる師匠に弟子入りする所からはじまる。
そして入門が許されると、様子見の見習いから、寄席に出入りできる「前座」となり、「前座」で寄席のしきたりやなんかを勉強し、噺の数も増えてくると「二つ目」となり、一人前と認められる。
そこから芸を磨いて、寄席でトリを取っても恥ずかしくないと認められると、「真打ち」となって、弟子を取ることを許されるという順序がある。
この噺家の他に、寄席には「色物」と言われる、漫才や曲芸、紙切りなどの芸人が出て、お客を楽しませるので、そういった人たちの世話もするのが前座だ。

この映画は、恋人に「落語家になるから、前座から二つ目になるまで4年待ってくれ。」と言った男が、立花亭ピカッチなんて名で、9年5ヶ月も前座をやるハメになってしまった、ある日の寄席楽屋を映している。
場面は楽屋から出ずに話が進み、主人公のピカッチが、楽屋で起こる不測の事態を八面六臂で収めていく姿を見せてくれる。
不測の事態といっても、本来が社会不適合者である芸人たちなので、これをなだめ、すかし、脅しながら、高座を進めていくのは並大抵の事ではない。(笑)
トリの大師匠立花亭圓志(えんじ)が来るかどうか分からないというのに、女性雑誌の記者が来たり、入門志願の今時の若者が来たり、終いにはピカッチの待っててくれてるはずの恋人まで来たりして、高座とは関係無いところで楽屋だけがてんやわんやになってしまう。
圓志師匠がきて、カミナリを落とされたピカッチが、あわやこれまでか、と思った所でハッピーエンドとなる・・・、いわゆる落語でいう所の人情話的でストーリーは終わる。

落語や寄席なんか知らない人には、何が何だか分からないかもしれないが、好きな人たちにはちょっとたまらない魅力がある映画に違いない。
途中出てくる、三谷昇さんが演じた老奇術師なんか、オイラが学生の頃に池袋演芸場で見た、高座に出てきた途端に「先生!病院に帰りましょう!」と言われて、弟子に楽屋に連れ戻された老奇術師を思い出して笑ってしまった。(爆)

この映画に協力している噺家一門は、金原亭一門と古今亭一門だけしかクレジットされていなかったのだが、これだけ落語をテーマにした映画が流行るのだから、柳家一門や林家、桂、春風亭などの一門も協力して、古谷三敏作の『寄席芸人伝』をドラマ化しても良さそうだと妄想する一休であった。
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