カタパルトスープレックス

ローラのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ローラ(1981年製作の映画)
3.6
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督のメロドラマ。『マリア・ブラウンの結婚』(1979年)につづく西ドイツの戦後復興を描く「西ドイツ三部作(Bundesrepublik Deutschland Trilogy)」の第二作目です。だいぶ前衛色は薄れてメロドラマに接近しています。

『マリア・ブラウンの結婚』は戦後すぐでしたが、本作の舞台は戦後から10年近くたち復興にも勢いがついてきた1950年代の西ドイツ、建設ラッシュのバイエルン州の小さな町です。

主人公ローラは建設会社の社長でシュッカート専属の娼婦。シュッカートは街の建設利権の中心にいて、市長とも繋がりがある。そこに新しい建設局長としてフォン・ボームが着任。建設利権のボスであるシュッカートやその取り巻きはフォン・ボームがどのような人物なのかを様子見。様々な偶然が重なり娼婦ローラはフォン・ボームと知り合い、二人は恋に落ちるのだが……という話です。

このようなストーリーなので表面上はすっごくメロドラマです。昼ドラみたいな感じ。もちろんファスビンダー監督の特徴である動く構図もあるのですが、場面転換の演出などがキラキラしていてメロドラマ感を強調しています。

しかし、中身は「成長と理想の狭間の妥協」という社会的なテーマだと受け取りました。フォン・ボームは基本的に正義感が強く真面目です。シュッカートは俗人的で資本主義を代表するような人です。ここで重要なのはシュッカートは俗人として描かれてますが、悪人ではない。戦後の成長期ですからシュッカートのような人物も必要。娼婦ローラはその狭間にいる。

主要キャラクターであるローラ、フォン・ボームとシュッカートはとてもキャラクターが立っていますし、建設局の職員エスリンなど重要な脇役の存在も際立っています。

いろいろと褒める部分は多いのですが、それでもやっぱりメロドラマですしファスビンダーらしさは少ない。性的マイノリティーも出てこないし。ファスビンダーに求めるものによって、本作の評価は変わるでしょうね。