くますけ

スリーピング ビューティー 禁断の悦びのくますけのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

淡々と、とても静かな映画だった。
ルーシーの華奢で真っ白で柔らかそうな身体は官能というより芸術の視線。
ただ最初の下着では、え?乳首はみ出てるけどそれしまわなくていいやつ?チラリズム、マニアックすぎ!って思ったけど(笑)

病気の恋人の死期は近い。
失うことの恐怖に、ルーシーにはそれ以外の怖いものなんて何もないようだった。
薬も、お金も、身体を大事にしないことも、人にどんな風に思われるかも。
凍った心を武器に、したたかに突き進む。

秘密クラブの老人たちは眠りに沈んで何をされても覚めない娘にそれぞれ欲望をぶつける。
滑らかな肌を堪能する者、口汚く罵ってもう役には立たなくなった男としての自尊心を取り戻そうとする者、肉体を物のようにぞんざいに扱う者。
地位があればこそ、なおのこと本能とは遠ざかるストレス。
相手が人形でも、死体でも、意識のある人間でも叶うことがない欲望が満たされる。
誰でも持っている、現実には叶わない、はずの欲望を満たすこと、それはパンドラの箱なのかもしれないけれど。

ルーシーは途中、「死の恐怖なんてまやかしよ」と言う。
しかし最後のシーンでは死にかけ、隣には死んだ人が横たわっている状況に、彼女はやっと死の恐怖を取り戻したんじゃないかと思う。
くますけ

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