三体艦隊

アンチクライストの三体艦隊のレビュー・感想・評価

アンチクライスト(2009年製作の映画)
4.2
宗教的な要素はキリスト教圏で育ったわけではなく、読み取れないので、別の角度から感想を述べたい。
仕事柄、精神疾患の方と接する機会が多いのだが、トリアーの描く精神疾患はシンプルな鬱病ではないと思う。
メランコリアのときもそうだったが、能動的に周囲に害悪を撒き散らしている。
パーソナリティ障害の方と接しているときに、同じ感情を抱く。価値観は不明だが、ただひたすら「利己的」に動き、自己愛の補填を暴力的なまでに他者に求める。自己愛の飢餓状態とでも言おうか。
「神がいなければ、すべてが許される」のかもしれない。実存的空虚感に襲われて、自身を律する規範を失ったのかもしれない。カミュの作品「異邦人」の主人公が「太陽が眩しかったから」殺人を犯したことと、当作品の間接的な子殺しとを比較すると、当作品の主人公をより「邪悪」だと感じるのは何故だろう。
「すべてが許される」にも関わらず、なおも自分の中で「許してはいけない」と感じる部分は何なのだろう。
道徳的な極限を突きつけてくる強烈な作品。
三体艦隊

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