白波

アンチクライストの白波のレビュー・感想・評価

アンチクライスト(2009年製作の映画)
3.7
DVD鑑賞
もうキービジュからして強烈。そしてさすがですね。最初の一幕でしっかりと傷を残していきます。これは重い。同じくラースの「ニンフォマニアック」とは違いました。
シャルロットの演技がとにかく凄まじい。特に終盤。
体当たりだとかそう言ったものでもなく、何かに取り憑かれたような芝居でした。
その中でも割礼の描写はかなりキツかったですね…。
反して包むようなデフォーの芝居は痛みも伴いキリストのようにも。
そんな不安定な中で際立っているのが、画面の美しさでしょう。
冒頭もですが、エデンに移ってからの緑や動物などの生命が実に瑞々しく写されていました。

そんな物語は、幼児の喪失からセラピストの夫との心を癒す旅。
ではありませんでした。
色々な解釈ができる物語ですが、「アンチクライスト」これは神ならざる、悪または悪魔を描いた作品なのだろうと感じました。
橋を隔てた現世と神の世界。
そんな森の中の山小屋エデン。
アダムとイブ。
嘆き・痛み・絶望の三人の物乞い。
悪を滅してエデンを後にしても、再び溢れかえる悪。
再びの「涙流るるままに」。
これは決して逃れることができない、人間の業のようでした。

本作はラース作品の中でもかなり評価が割れそうな作風です。
実際制作にあたりラース自身が鬱にかかってしまったので、色濃く反映してしまったのだと思います。
兎にも角にも、やはりラースらしくキツい作品でした。
白波

白波