ふじべん

風立ちぬのふじべんのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
3.5
世界の宮崎駿が送る、戦争を舞台とした一人の飛行機作りの男の物語。ゼロ戦の開発者堀越二郎がモデルで、ただ美しい飛行機を作りたいという純粋な気持ちと、それが戦争で人や物を破壊するという武器であるという葛藤を描いている。

監督は言わずと知れた飛行機や船を書くのが好きな一流の絵描きであり、思想的には平和主義である。
そんな監督の矛盾や葛藤が映画にも重なっていて二郎=宮崎駿という、めんどくさい作品にも見える。
しかしそこはジブリである。夢の中で何度も会う、実在したイタリア人航空技術者と主人公とのやりとりや、沢山の人達、大きな複葉機の躍動感、結婚式の美しい描写、風を感じる風景、タバコの煙、生き物のような車や飛行機、絶妙な色あいの昭和初期の建造物など、絵描き職人としての成熟された技術は感嘆するしかない。
最初は声優(庵野)も違和感があったが、慣れてくるうちにリアリティがあった。

全体の感想としては、関東大震災が起きそして戦争に突入するという、暗くて先の見えない感じが現代と重なり同時代性を強く感じた。
それでも二郎をはじめ出てくる登場人物すべてが、前向きに力強く生きている。これがこの映画のキャッチコピーにもなっている「今を生きる」というメッセージにつながっているのだろう。
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