Kawaguchi

風立ちぬのKawaguchiのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
4.6
「風立ちぬ」の風とは、軽井沢で緑を揺らす様な、爽やかな風なんかではありません。宮崎駿は「3.11の原爆事故が起こった時の様な、爆風だ」と語っています。

日本がファシズムに向かっていく時代に、「戦争は憎んでいるが、戦争の道具である美しいものを作りたい」という二郎。これは宮崎駿における「映画」に置き換えれるのでは、ないでしょうか。飛行機の設計図を書いているところなんて、アニメーション作りそっくりです。
おそらく「風立ちぬ」は極めて個人的な映画であり、おそらく宮崎駿の全作品中、最も個人的な内容を含んでいると思います。

映画というアートフォームが生まれて間もない頃、1910年代からナチスのプロパガンダ(広告)として利用された歴史があります。宮崎駿自身もアニメを作ることは罪深いことだと話しています。フィクションの世界に生きるといきるというのは戦争と同じく、罪深いものだと。

二郎は戦争も直子もどうでもいいんです。
美しいもの作ることしか興味がない、
それが悪魔(カプローニ)との契約です。狂った人です。
罪を背負う覚悟がなければ、大したことなんて、できないよと。
そこに自分を重ねたんではないでしょうか。
これは宮崎駿自身の物語です。
Kawaguchi

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