Tai

風立ちぬのTaiのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
5.0
空に憧れて…

この作品ね。ジブリ作品史上、私が1番涙が止まらなかった作品なんですよね。もしかしたら全映画かもしれない。
劇場が明るくなって、外に出ても涙が止まらなくて、一緒に観に行った友人に「え、キモい…」と真面目に言われました。
友人も私ほどでなくとも涙していたのに、まじ心外(´・ω・)
先日、TVで製作ドキュメンタリーを放送していたので、それを観てのレビューです!

第二次世界大戦時の日本軍で活躍した戦闘機、通称・零戦を設計した堀越二郎をモデルに堀辰雄・作の小説をエッセンスにした物語。
空を舞う美しい飛行機に夢見た少年が、戦争という世で作ることになったのは、街を破壊し、人の命を奪う戦闘機。
彼は一体、何を考え、思い、設計し続けていたのか?

結論から言うとですね、二郎のラストの言葉で涙腺崩壊でした。
上映中、この主人公・二郎の心境をずっと考えながら観ていました。
これまでの宮崎駿監督作品中、最も表情に乏しい人物に思えたんですよね。庵野さんの声も手伝って。笑
でも、これまでの同監督作を観続けてきたからこそ、何も考えてない人物であるわけが無いと、その人物を感じ取ろうとスクリーンを観続けました。

そうすると、二郎はかなり葛藤しながら歩き続けていたんじゃないかと思えるシーンがいくつもあるんですよね。
彼の夢で登場した二郎の〝美しい飛行機〟は機関銃も爆弾も積まれていない、シンプルにまるで紙飛行機のような空を舞うためだけのような飛行機。
やっぱり彼は戦闘機を作りたくて作っているんじゃない。仕事人として評価されていても、葛藤し続けているのだということは十二分に伝わってきました。
夢という彼の個人的な空間で何度も現れたカプローニの存在自体も印象的でした◎

さらに彼の立場もまた辛いとこにいましたよね。
彼が視力の問題でパイロットでなく設計を考えるようになり、大学で知識を学び、見事その道へ就職したのは開戦前。
もう飛行機作りをする社会人として確立してしまっていたんですよね。しかもその腕を認められている。
「戦争の為の戦闘機作って」と言われて「あ、そういう危ないのはお断りです」なんて言える社会人はまずいない。戦争を認めるとかそういうのでなく、まず無理だったと思うんですよね。
なんなら戦力向上が戦争を早く終わらせるという考えもあったと思いますし。
でも、やっぱりその飛行機が人の命を奪い、乗り手もまた散っていく事に気がつかない人ではなかったというのが辛い。
そして、愛する人との生活もままならず…

劇場鑑賞中はそんな二郎を知れば知るほど、葛藤しているんじゃないか?でも、コイツ何考えてるか、ぶっちゃけ分からない!なんて思っていたらのラストの震える声で絞り出されたかのような言葉。
そうだよね!思ってないはずなかったよね!とそれまでの彼の人生を思うと涙が止まりませんでした。

色々と咀嚼しないといけない作品ですが、私なりにこの作品は何かを美化したり称賛しているものではないと考えています。
人生には自分自身でどうにも出来ないような暴風に襲われることがある。その中でも、日々は続いていくし、私たちは生きていかなければならないのだ。
という、宮崎駿監督が積み上げてきた人生から語ったメッセージとして受け止めたいなと。
太平洋戦争開戦の年に東京で生まれ、物心がつく頃に戦争を体験し、また戦闘機というのが現代よりも確実に身近な存在だったという監督だからこその熱量だったのではないかと感じています。


ちなみに一緒に観た友人はこれを〝恋愛映画〟と称し、私は〝青春映画〟と称しました。
関係の深い間柄でも感じ方が違うという面白さを実感できた作品の1つですね( ´∀`)b
Tai

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