日本最古の物語を映像化しつつ、紛れもないジェンダー映画
2018年に亡くなってしまった高畑監督にとっては最後の作品
描かれている平安時代より以前から続く男性社会というものの不条理
古典でなく現在の女性にも通づる苦悩
「おもひでぽろぽろ」でも社会に出ている女性の現実が垣間見えたが
高畑勲監督はここら辺にメッセージの主軸を据えているのかしら
翁にしても、何も悪びれた様子もなく姫を男性の性の対象として扱ってしまう
むしろそれが姫の幸せだと信じて疑うこともなく、この時代ではこれが当たり前の思想
その状況に対し怯え恐怖する姫の姿から
当時の女性もみな姫と同じよう感情だったのではないかと考えてしまう
…その想いは誰にも伝わることなく消えて去ってしまったのだと
そんな、声にならなかった悲鳴がこの作品を通して伝わってくる
限りある命の中で、生と死が繰り返されるこの地球に憧れを抱いた姫の罪と
限りある命の中で、穢れた社会性が構築された世界を受け入れなければいけない姫の罰
…面白かったけど、これは全然万人向けじゃない
ちなみに本作は製作期間は約8年、製作費は50億円以上という邦画ではありえない規模
(もうぶっちゃけ、途中で引くに引けなくて突き進むしかなかったんだよきっと)
度重なる延期の末にいざ公開すれば興行収入は制作費の半分程度
映画のリクープラインは製作費の3倍程度と言われているので…大赤字です
まあ、良い作品だということには変わりないので
水彩画がそのまま動き出すような繊細なアニメーションは唯一無二で素晴らしく
子供の成長に合わせた動き表現はアニメだからこそのもの
素晴らしい要素しかないのだが
それらが万人受けするものではなく、さらにそこに尖り過ぎたテーマなので…商業作品としては、コケるよな
利益とかじゃないんです
歴史的建造物のようなものだと思ってます