Lila

かぐや姫の物語のLilaのレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
3.5
完全にジブリスイッチ入っちゃったので、高畑勲作品へ。初見です。今まであまり惹かれてなかったのですが、「火垂るの墓」は大人になってから新しい刺さり方したので、それを期待して飛びつきました。(MAXで日本語版あり!)

絵本や紙芝居に生命が宿ったような映像。ずっと絵画を眺めている感覚は新鮮でした。時折苦悩を見せる表情や途中走って逃げるシーンは最早ホラー。昔話ってああいう不気味さありますよね。

捨丸と飛んでから、ラスト20分が圧巻でした。ラストカットは納得いってません…理由はあったのかな?絵本っぽくしたのかな?

時代背景が生み出す女性の悩みかと思いきや、現代にも通ずるテーマです。私の見た事のない形で「心の自由」を描いている気がしました。嫌だ、と思ったら月に帰らなければならない。社会に沿えないと死が近づくということ?怖い。

声優陣がめちゃくちゃ良い。超豪華ラインナップ。全員フィットしてて凄く良い。地井武男と宮本信子は、このためのAI?って思ったほど。朝倉あきも素晴らしく、高畑淳子の存在感は無二!

音も凄い。ずっと小鳥の囀り、ひぐらしの鳴き声、鈴虫や蝉の声など生命の声がします。日本の田舎風景そのままで、少し懐かしさがあり、日本の風情は正にこういう自然の音だなと実感します。

「生きている手応えがあれば」
これは凄い。素晴らしい表現です。
この作品は教養と高畑イズムの信者であるのが必須条件かと思います。難易度が高い。その難易度の高さも高畑勲方面に高い、といった印象です。

1時間半くらいでいけたのではないかなー?と思ってしまう私の感性。制作期間と費用は話題になってましたが、もう少し圧縮できたであろうところ、もっと私たちに寄り添って作れるものの、拘り抜いて突っ走るのは芸術家ですね。この規模とレベルで芸術家でいられる身分の人は少ない。というか、いない。高畑勲は、何があろうとも芸術家であり続けたっていうことを証明する遺作かと思います。

余談…しかし、お歯黒を始めた人は罪深すぎないか?と思うほど、この風習の美学は理解できません。
Lila

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