メルヘンバカ

かぐや姫の物語のメルヘンバカのレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
4.5
原作から真っ向と立ち向かった感じが逆によかったのかも。竹取物語ではかぐや姫の人間化が主軸にあるのだけど、今回は一人の人間として生きるかぐや姫、ないし竹の子がいて、それが外圧によって人間としての尊厳を失っていく。これはかぐや姫ではなく平安期の姫君全ての物語なのではないかと思う。何不自由なく、綺麗なものを与えられて優雅に過ごすけれどもそこに意思や自由は無い。それを現代的に転換させて、「生きる」ということについて考えさせる作品であった。
最後の天の羽衣の場面で、色彩が萎えていく表現がお気に入り。竹取物語でも天の羽衣を着せられたかぐや姫は「もの思ひ」がなくなって翁のことも地上のことも忘れて 、かぐや姫ではなくなり「衣着たる人」と表現される。地上を苦しみの多い汚き所、天界を苦しみのない美しき所と叙述された所以が明らかになる。残酷な冷徹な「幸せ」が天界にあるということを最後に示す場面、色彩とかぐや姫の表情によってよく表現できていたのではないか。
個人的には、竹取物語の帝がすごく好きなので、映画の鋭利な顎が残念だった(笑)竹取物語の帝は、かぐや姫に拒まれて三年間文通をし続けてくれるような紳士な方で、かぐや姫の心を開いてくれます…。彼の名誉のために。
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