喜連川風連

かぐや姫の物語の喜連川風連のレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
4.5
高畑民俗絵巻、成る。

生と死と欲望のある汚れの地、地球を恋焦がれた月の民、かぐや姫。

「生きるために生まれてきたのに、私は何をしていたのだろう」
「あんなこと何でもないわ!生きている手応えがあれば、幸せになれた」
「俺はお前と逃げたいんだ!」

80歳になってこんなキラキラ恋愛映画を作れるのが本当に凄い。

人々の一つ一つの表情、動き、喜怒哀楽まで豊かに表現される。

あたかも高畑さんがアニメーションの原点とおっしゃられた絵巻物のようだった。

民俗学的考証もしっかりしている。
かぐや姫が田舎を訪ね、そっとお椀をおかれるシーン。これは乞食に間違えられたのだろう。平安期の乞食はコツジキといい神の使いのようなイメージで存在しており、決して蔑まれたものではなかった。

かぐや姫は月からの神の使いであるし、面白かった。

仏教的価値観での幸せとはあらゆる感情や欲望の波風を無くし、あるがままの心を見つめることを言うが、果たしてそれは人間にとって幸福なのだろうか?

月からの使者はさながら、阿弥陀聖衆来迎図のようで、その価値観を象徴している。

人間的な感情を望んだというかぐや姫の罪と罰。知恵の実を食べたアダムとイブ的な原罪を背負い、地球に降り立つ。

それでも悲しみも喜びも全部含めて、生きていることを実感することが幸せなのではないか?映画ではそう問いかける。

「この地に生きる喜びを!」
喜連川風連

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