あまりにも息苦しいこの映画は、客観的に見れば明らかに悲劇であるが、主観で見たらどうだろうか。
2人は恐らく80代くらい。
言い方は悪いが、何かしらの病にかかってもおかしくはない年齢だ。
かくも長き人生を、如何にして終わらせるか。
それが思った通りになる人の方が少ない。
望まぬ苦しい治療の果てに、そばに誰もいない場所で亡くなってしまう人も多い。
この映画では、夫が妻に生きていてもらいたいというエゴを捨て、彼女の望みを叶えた。
楽しかった思い出の証である花を添えて。
彼女の尊厳を守る為の、究極の愛。
これこそが、我々が常々口にしている"愛"という実体なき物の正体なのだ。
何事も愛さえあれば、悲劇ではない。
誰かの死はいつも悲しいものだ。
その事を家族ではない部外者が悲劇だと決めつける行為こそ、エゴなのだ。
遺された娘も両親の選択の意味を理解するだろう。
彼女も家族だったのだから。