しまかす

愛、アムールのしまかすのネタバレレビュー・内容・結末

愛、アムール(2012年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

老老介護の苦しみ。我が家は早死にの家系なので私は祖父や祖母という存在に触れたことがないし、両親の介護が待ち受ける世界線にも立っていない。自身も介護が必要になるほど年を取る前に死んでしまうのだろうなという漠然とした思いがあり(もちろん事故や大病で要介護者となる可能性もあるけれど)、“介護”という行為がどこか縁遠い世界の話に感じることも多々。その程度のリアリティの中で、私はこの映画にそれほど愛を感じることはできなかった。無念。
開いた扉をコマ枠のように使う構図にフェティシズムを感じる性質なので、そういった意味では大興奮。

愛よりもジョルジュの孤独っぷりに涙が出る。社交的で朗らかな妻のいる日常が当たり前で、それがいつか終わるだなんて考えたこともなかったのだろうな。自分と、妻と…二人の世界が崩壊していく。それも自身の手の中で。こんなに苦しいことがあるだろうか。終盤、死装束を選ぶ彼の背中は恐ろしいほど悲しい。

ラスト15分はとにかく息が詰まる。
鳩はてっきり絞め殺してから愛撫していたのかと思ったけれど、そんなことはなかったらしい。

混濁する意識の中で母親を呼ぶアンヌの姿が実母に重なり、記憶から薄れていた嫌なアレコレが甦った。私も死の間際には母を呼ぶのだろうか。89877
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