近所のGEOにないから遠くのTSUTAYAまで借りに行ったよシリーズ その17
どうもうちの近所のGEOはミヒャエル・ハネケ作品の品揃えが良くなくて、TSUTAYAで見つけてテンション上がった逸品。
いや、テンション全然上がらない内容なんですけどね。
ハネケ2杯目。
元音楽家の老夫婦のジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)に突如訪れた試練。アンヌは脳梗塞となり、手術も失敗して右半身が麻痺してしまう。ジョルジュは甲斐甲斐しく介護を続けていたが、妻は終わりにして欲しいと死を願うようになる。
フランス語のAmour(愛)と題し、描かれるのは老夫婦の介護生活。
健やかなる時も、病める時も
良い時も悪い時も
その全てを見せる。
観衆としても驚く程の早さでアンヌの病状は悪化する。
アンヌ役エマニュエル・リヴァの演技に息を飲む。
喋れなくなる演技も、痙攣する演技も、素晴らしかった!
ついこないだまで喋れていたのに…。
もう、その口元は覚束ない。
元ピアノ教師としても誇り高く生きてきた女性が、夫や看護師の助け無くしては生きていけなくなってしまう辛さ。
愛する者の望みは安楽死。
辛いつらいツライ…!!
そんな事言わずに、お水飲んでよ…!!
老夫婦の介護生活を追体験し、生々しい苦しみが観ているこちら側に雪崩れ込んでくる。
淡々としていながら、全てを見せてくるハネケ。流石だなぁ。問題のシーンは突然訪れるけど、ジョルジュにとってもアンヌにとっても、その時が来たんだと妙に納得してしまう程、相応の時間が過ぎたのだ。
キッチンに流しっぱなしの水を止めたアンヌ。
床が水浸しで、何者かに突如襲われる悪夢を見るジョルジュ。
そして家の中に迷い込んできた鳩。
追い払うだけで外に逃がした1回目。
毛布で包み抱きかかえる様に逃がした2回目。
(逃がしたと勝手に思い込んでいましたが、ここは解釈が分かれます)
メタファーが随所に光る作りも好み。
とどのつまり愛とは何かの明確なアンサーを127分で導き出したハネケの才能にただただ敬服してしまう。
僕も誰かのお世話になるくらいなら、この生涯、幕を閉じて構いません。下のお世話までお願いする事になるなんて、恥ずか死過ぎる。そういう意味ではアンヌへの共感はハンパじゃなかった。