ちか

愛、アムールのちかのネタバレレビュー・内容・結末

愛、アムール(2012年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

’心中’の物語といえばそれまでだし、ニュースに流れれば、「社会ができることは何か」「どうしてこうなってしまったのか、何がいけなかったのか」「失敗から何を学べるのか」と、なるだろう
でもハネケはこれを、「介護でも、病気でも、死でもなく、愛の物語だ」と言っていた。
誰かに落ち度があったわけじゃない。アンヌを老人ホームに入れるのもまた愛だろう、そうすれば、確かに、ジョルジュはアンヌを殺すことを免れ、自分も死なずに済んだのかもしれない(ラストのシーンをジョルジュの死と解釈)。だけど、ジョルジュの行動も、また、愛という感情に突き動かされた先にあった、免れることのできない運命だったのだと思う。
家で過ごすことになったのはアンヌが病院を嫌っているから、看護師を雇うのをやめたのは、彼女があくまで職業的な介護に徹していた(もちろんそれにしてもひどい行動を取っていたけど)のに対し、肉親であるジョルジュにはその心遣いの行き届かなさが我慢できなかったから、また何よりアンヌが自分の衰えをごく親しい者達にすら、見せたがらなかったこと。ジョルジュはアンヌの尊厳を守るために周りの目から隠さなければならなかったこと、、、。愛する人が死にたいほどの苦しみを抱えている、ほとんど二人だけの密室の中で、その感情を共有して、一緒に苦しんで行く他ない。一緒に死に向かって行く他なかったのだと思う。
心中や殺人を肯定や否定するわけじゃない、ただ、この映画を見るときは、二人の愛だけを見つめたい。ラストシーンで、エヴァの、両親の愛の巣に安らぎを見出す姿を見てそう思った。
ちか

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