みんと

愛、アムールのみんとのネタバレレビュー・内容・結末

愛、アムール(2012年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「終わりにしたい」
「人生は長い」

この願いを妻は「壊れる前に」しっかり残していた。

老いて、機能が停止していくのが動物の宿命だから、それをケアし合うのが動物としての筋かもしれない。いや、ケアすらしない動物の方が多いだろう。しかし、「愛」という概念を手に入れた高等な人間には、そう理屈通りにはいかない。

「生きる」ことと「生かされる」こと、「cure」することと「care」することの幸福度は大きく違う。こう考えていくと、安楽死・尊厳死は認められるべきだと感じさせられる。

お手伝いをしてくれた夫婦の旦那の「二人の愛の姿に脱帽」と言う姿が印象的だった。とても二人に対して献身的で愛のある言葉だと思うし、私も同感だった。しかし、当事者たちにとっては真逆の生活だった。
つまり、最も愛する人が「壊れながら」死に行く経験をしないと、本当の意味で2人のことを理解することはできない。

そう語る私も、父母、なんなら祖父母すらあのように見送ったことのない身。しかし、いずれは祖父母、父母、兄弟、そして最も愛する人、と順々に見送っていくだろうと考えると、本人にとって1番いい死に方とは何なのかと考えさせられた。

夫は2人の間に存在する「愛」を、他者を部屋という空間から排除することで、2人だけのその空間で完結させた。完結させる直前に「イメージを損なわない」ような昔話をして。
(二匹目の鳩を窒息させず外へ逃したのが、妻に対する少なからずある罪悪感なのかなと考えるとすごく悲しくなった、、)

態度の大きいことを多くを語れる分際ではないが、人間という動物の手に入れた究極の愛を、2人にしかわからない愛の極地を観ることができた。
みんと

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