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汚れなき祈りのクリームのレビュー・感想・評価

汚れなき祈り(2012年製作の映画)
3.9
2005年、ルーマニアの「悪魔憑き事件」がモデルとなった実話ベースの作品。淡々と事実を描いて行き、終盤に一気に動きだす。チャウシェスク政権崩壊後の中絶禁止法等により、子供が増え孤児が急増。成長し行き場を無くした孤児と受け入れざるを得ない修道院の起こした悲劇。なんとも言えない余韻がリアルで良かったです。ムンジウ監督作品、良いです。
悪魔祓いの話だけど、オカルト的なモノではありません。

同じ孤児院で育ったアリーナとヴォイキツァは、かつて愛し合う仲だった。ドイツで働いていたアリーナは、ヴォイキツァと一緒に暮ら為、彼女を迎えにやって来ました。が、ヴォイキツァは、アリーナと離れている間に宗教にのめり込み修道院から出る気はありません。アリーナは、ヴォイキツァを救い出すべく、修道院に乗り込むのですが…。



ネタバレ↓



国民の約9割が信仰するルーマニア正教。その修道院にアリーナが乱入し、ヴォイキツァを連れ出そうとします。アリーナは自分の愛が受け入れられず彼女に執着する。ストーカー気味です。
修道院にとってアリーナは信者ではなく、出て行って欲しかったが、ヴォイキツァに執着するアリーナは、修道院に居座り、常に苛立ち反抗的になり、暴れます。取り押さえられ、病院に入院も病室がなく、すぐに追い出された。病院にも里親の家にも彼女の居場所はなく、受け入れられるのは修道院だけでした。
神父は、信仰心の無いものは受け入れられないと断りますが、ヴォイキツァの熱心な頼みと回りから「あなたが神に試されている」などと言われ、アリーナを受け入れざるを得なかった。
正教会の教えで、アリーナの異常行動は、悪魔が憑依していると判断。悪魔祓いの儀式で、取り払う事に決定。
暴れるアリーナを板に縛りつけ、寒い部屋に食事も与えず、何日も放置します。しかし、修道女達は、身体を拭いたり、励ましの言葉を掛けたり善意で、この恐ろしい儀式を行っています。
ヴォイキツァは、いよいよ耐えきれず、彼女の縄を解いて、逃げてと言い残し部屋に戻ります。翌朝、アリーナは倒れ救急搬送されますが、亡くなりました。神父、修道女達は逮捕され護送される所で終わります。

修道院側が、自分達が正しいと信じているのが狂気だった。アリーナに必要なのは医者。善意で行ったつもりが、妄信的になり1人の人間を死に追いやった。途中で誰も気付かない姿は、集団心理の怖さを観ました。でもアリーナがストーカー化してる様に見えたから、いずれにしても別の形で、事件は起きたのかも知れない。チャウシェスク政権が終わっても国が混乱したままなのも悲しい。

*えくそしす島さん、ありがとう*
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