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汚れなき祈りのHKのレビュー・感想・評価

汚れなき祈り(2012年製作の映画)
3.7
『4か月、3週と2日』などのクリスチャン・ムンジウ監督によるルーマニア映画。キャストはコスミナ・ストラタン、クリスティーナ・フルトゥル、ヴァレリア・アンドリウツァなどなど

孤児院出身の二人の少女がいた。二人は共に愛情を育んでいたが、一方はルーマニアの厳格な教会で修道女として勤めていたが、もう一人はドイツで生まれ育った。ある日、二人は再会するが、現代文化に慣れ親しんだドイツ出身の彼女は修道女を引き戻そうとするのだが…

監督のムンジウさんはあくまで映画の物語内では政治的批判等の内容は一切込めてないが、説話の不条理な構造性からこのルーマニアの独裁政権ゆえの病床を非常に婉曲的に表現して風刺しているようで個人的には好きですね。

フィックスでの撮影を多用して、登場人物の心情を顔や彼らの佇まいから浮彫にしていくような表現スタイルはとても好きですね。物語も前作と同じくリアリズム全開で物語るためにそこがとても面白かったですね。

主要登場人物の中でも二人の少女たちにフォーカスがあてられるが、あくまで教会をブラックボックスとして描いてるために、そこでは普通なアリーナが異様な存在として見えてしまうのが恐ろしい。

彼女の説得に葛藤するものの、結局は教会側の意見に飲まれてしまい、彼女に対して教会一丸となってとんでもないことを最終的にしてしまうことに。あそこでの十字架に張り付ける過程もリアリズムに溢れていて良かったですね。

映画ではあくまで教会メインで説話が形成されるので、それゆえに終盤でついに訪れる衝撃の事実というのも中々恐ろしい。現代で起こるからこそ恐ろしいものがある。

恋愛だとか同性愛などのような行為が厳格なキリスト教会だとやはり禁忌として取り扱われてしまうからこそ、そこでの矛盾で葛藤した揚げ句に酷い結末になってしまうのが恐ろしいですね。

北欧関連だとこういう厳格なキリスト教によって起こってしまう不条理な出来事を扱う作品が結構多くて、その結果、歪んだ悪習が残ってしまう村社会が形成されてしまうのが恐ろしい。他にも『変態村』とか、そういうのが怖いイメージですね。

何が正しいのかを信じるのは結局は所属するコミュニティに依ってしまうというのも非常に恐ろしいことだと思いましたね。エクソシストみたいな悪魔祓いなどのオカルト要素をこのような説話構造でリアリズム溢れる作品として描くのがとても良かったですね。人間が一番怖いと言いますか。

最後の看護婦さんの言葉が非常に皮肉に溢れていて良い。

ただ、上映時間がちょっと長かったかな。もうちょっと短くてもよかったような気はしますよ。村のグレーがかかったような景観は結構不気味で好き。

いずれにしても見れて良かったと思います。
HK

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