月うさぎ

ジャックと天空の巨人の月うさぎのネタバレレビュー・内容・結末

ジャックと天空の巨人(2013年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

主人公よりも騎士エルモントがかっこいい。イザベラはエルモントと恋仲という設定の方が断然ロマンティックだったはずだ。
「家族で楽しめる作品だよ。笑えるし、このファンタジーとロマンスと冒険とともに展開する壮大な“映像 ”を楽しめる」
本気ですか?それを狙ったのなら、ジャックはファミリー向けにもっと少年に近い年頃にして、純粋に冒険者にするほうがよかった。
主役のジャックは冒険も男しさも勇者らしさも成長も全部ハンパな感じ。ユアン・マクレガーが初めて魅力的に思えたわ~。このキャストじゃあ、彼がひきたつに決まっているでしょう。
巨人のリーダー、双頭のファロン将軍はビル・ナイが演じていたそうだ。また。彼はこういう…。(パイレーツのデイビー・ジョーンズも彼よ)
どうりで存在感抜群な訳だわ。この役のために声を潰して嗄れた声を出しているのに日本では吹き替えしか見られなかったなんて…しかも吹き替えがゴリだったなんて…なんて残念なんでしょう。

ストーリーは英国の昔話『ジャックと豆の木』と『Jack the Giant Killer』を元にし、天空に巨人たちの国があり、成長が異常に早い巨大な豆の木が架け橋となるというモチーフが使われている。

1000年前、豆の木をつたって巨人が地上の人間界へ下ってきて、強奪と人喰いの限りを尽くしていたのを、エリック王の知恵によって天空へ追い返され閉じ込められたのだった。
ところが、封印されたはずの巨人を使って自分の王国を築こうとする企みが進められようとしていた。その野望を抱いていたのは王国の王女イザベラと婚約までしている王の腹心ロデリックだった。
反逆阻止に失敗した修道士はジャックに豆のタネを預けたが、その豆が水に濡れたとき…。

というお話で、あとはまあ。予想とおりのいろいろなハラハラドキドキが展開する。

本作品にはジェイムズ・キャメロン監督の『アバター』用に開発された“サイマルカム・システム”の最新版が使われ、製作費に2億ドル近くかけているそうだ。
当然迫力ある映像、見事な出来栄えのCGに美しい自然やリアリティのあるセットなどなど。さすがは大作と思いきや、どうも見せ方がそれほどうまくもない気がしてならない。
エルモントとロドリックの格闘も何度が見直したけど何が起こっているのかイマイチわからない。
全般的に死ぬとき、あっさりすぎ。巨人に食われるシーンもなにもかも。残酷シーンを入れたくないという配慮ならそもそも人喰い設定なんてしなければいいのだ。

悪役がいかにも酷い憎らしい役で出てくるのに結構あっさり早めにくたばってしまうのでストーリー的にもハラハラがない。
むしろ巨人の醜さを強調する感じで戦争映画や「怖くない」ホラーに近い。
意味深な小道具がいろいろ出てくるのに結果、活きていない。黄金のハープは?あの松ぼっくりみたいなものは何?
ジャックの飼い猫がかわいくて魅力的なのに別れっぱなしで二度と登場しない。猫はどこへ?
ジャックの馬なら農耕馬のはずなのに、白いサラブレッドなのはなんでだ?

更に物語の最大の破綻を感じるのはこの部分。
ずっとエリック王の直系の王女と盛んに強調していたのに、エリック王の王冠をジャックがかぶっちゃうってのはどうみても越権行為だよ。
王女は冒険者なはずなのに、ここへきて急に守られるだけの存在になっちゃう?

ツッコミどころや納得がいかないことがいっぱいあります。
何も考えずに映像をみてハラハラしてればいいってことなんですね。
確かに巨人軍団との闘いのシーンはついつい息を呑んでしまいました。さすがです。
映画館で3Dで観たならもっと迫力があったでしょう。
「指輪物語」の迫力映像を自分も!と思ったのでしょうけれど脚本が練れてません。
私が最も面白かったのは最後の豆の一粒の使い方。これは意外な展開で発想がいいと思いました。

しかーし!

巨人を倒してめでたしめでたし。で終わってくれない。
なんでお姫さまと王子様が私と僕のパパとママである必要があるのか?
最近こういうのばっかり…と思う。
さらに現代のロンドンに切り替わり過去と現在が繋がる。
「美女と野獣」「ローン・レンジャー」などにも感じたことだが、こういう昔話的なものはその世界観の中で物語を完結させていいんじゃないかと思う。
無理に現実に引き戻す意味がわからない

そして余韻のつもりだろうけれど、また悪巧みが近い将来引き起こされるかもしれないという暗示で終わる。
私はこういう演出が好きではない。
「キャリー」は衝撃的だったし、マイケル・ジャクソンの「スリラー」のエンディングは意表を突いていたけれど、以後ものまねが多すぎて、こういう幕切れは手あかが付き過ぎた感じがする。

さて、シンガー監督はこういっている。
「これは単にジャックの成長を描いた大冒険映画ではないんだ」
私は ジャックの成長を描いた大冒険映画のほうが楽しかったはずだと思う。
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