カッチェ

パラノーマン ブライス・ホローの謎のカッチェのレビュー・感想・評価

3.8
感想①「3年間の情熱」
構想10年、制作に3年を費やしたクレイアニメによるストップモーション・アニメ作品。2012年に公開されたストップモーション・アニメでは興行収入第1位を記録した大ヒット作品。

この作品はCGアニメと違い、ストップモーション・アニメなので表情も動きもリアルに近いです。カーアクションシーンがあったり、住民とゾンビの戦いや、暴動シーンもありストップモーションとは思えない迫力。撮影が本当に大変だったと思います。そして映画の内容は、子供向けというよりはやや大人向け。

感想②「魔女狩りというアニメ映画にしては重い設定」
300年前には魔女狩りが行われていたという言い伝えがある町、ブライス・ホロー。この町に住むノーマンは、ホラー映画好きの普通の少年だが、ただ一つ他の人と違うのは死者と話せる不思議な能力を持っていること。ノーマンは自宅の居間のソファーにずっと座っている亡くなったおばあちゃんと会話したり、学校への通学路で毎日言葉を交わす死者達がたくさんいる。そんな彼を家族や学校の皆は薄気味悪く思い、変人扱いして距離を置いていた。

ある日彼と同じように変人扱いされているため、特に交流することもなかった親戚のおじさんが死者となってノーマンの元へやって来る。彼は自分が魔女の呪いを静めてきたが、自分が亡くなってしまったので300年前の魔女の封印が解かれようとしていると告げる。魔女が悪霊を呼び寄せブライス・ホローを滅ぼそうとしており、この町を守れるのはノーマンただ一人だと訴えかけるが…。

魔女狩りをアニメ映画の題材にするのが凄いと思います。魔女狩りをテーマにした映画はたくさんあると思いますが、まずそれを観て明るい気持ちになれない物が多そうですよね。子供が観る前提なものが多いアニメ映画ですから、魔女狩りをテーマにしたことが凄い。この作品、大人も楽しめるようになってますが、こういう作品だからこそ子供さんに観てほしいですね。

感想③「主人公の境遇の酷さ」
ノーマンは死者と話せることにより、優しい心を持ちながらも全てにおいて消極的でやや無気力な少年。子供なのに諦めることを覚えてしまい、生きてる人間より死者との方が素直に接することが出来ます。死者と話せることを家族に打ち明けてますが、その全てが彼の妄想だと決めつけている家族は、彼のことを疎ましく思っています。

父親は心配しすぎたことが原因で逆に悲観的になってしまい、なぜ自分の息子がこんな嘘ばかりつく変わった子供なんだと嘆きます。母親は愛する息子を毎回庇おうとしますが全くノーマンの言ってることを信じてません。多感な年頃の姉はおかしな行動ばかりするノーマンが邪魔で、どこか遠くに消えてくれないかなっと思っています。

また物語の冒頭から主人公が町中の人から信用されておらず、死者と話せると嘘をつきまくる変人だと思われています。そして魔女の封印が解けたことにより呪いが出始め、とあることをきっかけに今度はノーマンが魔女の末裔だと疑われ始めます。ブライス・ホローの人達は、自分が理解できないものに対しての恐怖を持っています。その恐怖がいつしか集団心理となり暴動へと変化。これって、現実世界でも珍しいことじゃないですよね。子供が主人公のアニメ作品なのですが、意外と考えさせられる。

感想④「子供の時に観たかった」
アメリカでは大ヒットしたにも関わらず、残念ながら日本ではマイナー作品扱いなので地上波のテレビで放送されたりはしないと思いますが、ブラックユーモアや笑えるシーンも多く子供でも大人でも楽しめる作品です。逃げてばかりだったノーマンが自分の能力と正面から向き合い、苦悩しながらも徐々にそれを受け入れる姿は心から応援したくなります。また、ノーマンの気持ちの変化によってまとまりのなかった家族関係も変化していくところが良かったです。もちろん、300年前にどうして魔女狩りがあったのか、過去の出来事もしっかり描かれています。

魔女は本当に悪の存在だったのか?
その魔女を悪だと決めつけたのは誰なのか?
ブライス・ホローの町の人々が正義なのか?

アニメなのに考えさせられる…2012年製作なので無理ですけど、私もどうせなら子供の時にこの映画を観たかった(笑)
カッチェ

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