まぴお

偽りなき者のまぴおのレビュー・感想・評価

偽りなき者(2012年製作の映画)
4.0
【人を憎むということ】

原題『JAGTEN』(The HUNT)=“狩り”

キタキタキタキタキタきたよこれ。
ここ最近ではベスト3に入るくらいの胸糞悪い映画です。
「それでもボクはやってない」「ファニーゲーム」なんかより圧倒的に胸糞悪い。とにかく今幸せすぎて怖いからその反動で無性に胸糞悪くなりたいって人は観たら良いと思う。そんな人いないと思うけど。

まずは見事なまでにじわりと粘り着くような伏線の張り方。
「狩り」というキーワードを中心に罪の意識を持たない者が主人公ルーカスを執拗に絶望的な孤独へ追い込む。

恐ろしいのは人間はそれが一度正しいと思い込むと例えそれがどんなことであろうと
盲目的に考えを変えようとしないこと。一度動き出した暴走は簡単に止まらないこと。

そしてそれが間違っていると思い込むと
どんな攻撃的な行動をしてもいいと思い込む人間の心理的恐怖。
憎悪は憎悪を呼びその悪意は肌にまとわりつく。
そしてそれが正義の鉄槌だというかのように命さえも...ネットでも娯楽に近い私刑が蔓延っている。自分自身も罪を犯しているかもしれないという自覚もなく。


序盤は少女のほのかな恋心に微笑ましく観ることができたが
物語は少女の女心の嘘から一転して
暗雲立ち込める深い溝へ転落していく展開へ。
彼女に悪意がないだけにひたすら辛い。
終始、鉛を飲み込むような息苦しさが続く。
関係ないけどコントレックスって本当に飲みづらいよね。
生活水として飲んでる子知ってるけどすごいなぁと思わざる得ない。
ひたすら尊敬する。あれの10倍くらい息苦しい。たぶん。

ラストの余韻含めて非常に脚本の匠を感じさせる。
何度も観たいタイプの映画ではないが一度くらいは観ておいて損はない作品かもしれない。

って今年5歳になる幼稚園児の女の子が言ってた。

518本目
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