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地獄でなぜ悪いのmichiのレビュー・感想・評価

地獄でなぜ悪い(2013年製作の映画)
4.2
例えば、森田芳光『の・ようなもの』のように初々しく、フランソワ・トリュフォー『アメリカの夜』のように映画へのオマージュが満載で、テオ・アンゲロプロス『霧の中の風景』のように秀逸な長廻し。それは園子温が映画を作る幸せを全開に詰め込んだようで。とても清々しい青春映画。

映画監督とは、行きすぎたバイオレンスへの耐えがたい表現欲に悩まされている人たちなんだと思う。見る側の常識を超えた過剰なまでの残酷さには、映画の本質が活劇であって画の完成度を目指すあまり踏み込んでしまう狂気に満ちた世界に彼らが取りつかれていることを告白しているようだ。

そこには統一的なストーリーなどなく、ただ画の連鎖だけがあって、映画の楽しみがそんな狂気の中にあることを物語っている。
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