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リンカーンのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

リンカーン(2012年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

 DVDで日本向けに監督直々挨拶あって驚き!これはやはり本国アメリカにこそ響く内容なんだろうなぁと思った(南北戦争って奴隷制の有無で始まったのか、知らなかった!)。重厚だが、社会派すぎてかなり眠くなるところも。会話の応酬劇を字幕で追うキツさが。

 リンカーン、どんなに怒っても怖くない希な例。あのダニエル・デイ=ルイスが演じるわけだからちょっと怪演チックなものを期待してしまった所もある。そこにあるのはアメリカの父たる絶対的な揺るがない存在感。物腰柔らかく、それでいて強かに物事を進めていく。それでいてちょっと背中の曲がった時々おもしろ話をする普遍的老人像も兼ね備え、偉人への道のりが何も特別なことではないと言いたげな気もする。

 「スピルバーグが物語ることに重きを置いている」という仮説を常々思ってるのだが、今作もまた当てはまるんじゃないかと。事あるごとに引用される小話は聞く人らの心をぐっと惹きつける。そして核心に迫る演説へと導く。これがしっかりと良心に従うものでつくづく良かったと思わせる、リンカーンは偉大だなと(小悪党でなくてほんと良かった)。後半、リンカーンが「民主主義はカオスではない」と説く箇所がある。「カオス」といえば「ジュラシック・パーク」のマルコム博士のカオス理論の話だろう。スピルバーグは、カオスと対峙するための人間の武器として”物語る”ことの必要性を描いている。それが今作にも見られ、一貫した主張なんだと理解できた。

 冒頭のリンカーンの座る台座とそれを見上げる構図は、まさしく今のリンカーン記念館前の像のデカさを想起させ、アメリカ人にとってはそれだけでグッとくるものがあるのではないだろうか。
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