むさじー

ある海辺の詩人 小さなヴェニスでのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

<小さな漁師町に暮らす二人の移民の静かな愛>

脚本・監督のセグレはドキュメンタリー映画作家で、初の劇映画。
屈原を奉るお祭りでは、蓮の形をしてロウソクを立てた灯籠を水面に浮かべるという風習があり、それを真似したベーピが、浸水した店の床にロウソクを浮かせるシーンがあった。
温かさとはかなさを併せて感じさせる印象に残る映像で、これがラストの弔いの形につながっている。
息子を故郷に残してきたシュンリーと、家族と離れて暮らすベーピ、ともに異邦人で孤独を埋め合うかのように寄り添う二人だったが、ムラ社会に根強い移民排斥感情による邪推と迫害によって裂かれていく。
この映画の素晴らしさは、ドキュメンタリー(社会性)と詩(芸術性)がうまく溶け合っていること、そして静謐な中に描かれる映像美。
あえて物足りなさを指摘するならば、シュンリーの背後にある組織、そこで彼女が置かれている境遇の説明が欲しかった。
でもやはり静かな秀作。
むさじー

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