MasaichiYaguchi

ハッシュパピー バスタブ島の少女のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.5
「ノアの方舟」を彷彿させるような現代の寓話で描かれるのは、ハッシュパピーという少女の生命力の輝き。
この現代の寓話は、一見ファンタジーのようでありながら、現実の厳しさを我々に突きつけてくる。
この作品には、対立する様々なものが登場する。
産業と自然、現代と古代、土手の上の都会と野趣溢れるバスタブ島、親と子、そして生と死。
これら二つのものが、鮮やかなコントラストをなしながらストーリーが展開していく。
現代の文明から取り残されたような自然溢れるバスタブ島。
母親が失踪し、父親と二人でその島に暮らす少女、ハッシュパピーの日々は、正にワイルドライフ。
この平和な島に、ある日「大嵐」が襲来する。
この「大嵐」によって、島もハッシュパピーの生活も一変してしまう。
ここから彼女らのサバイバル生活が始まる。
この「大嵐」の被災者である彼らを見ていると、思わず東日本大震災の被災地や被災者達がオーバーラップしてくる。
島がどのような状況になっても、彼らにとって生まれ育った故郷なので、簡単には捨てられない。
人類は文明や産業の進化によって「豊かな生活」を得てきた。
そのかわり代償として、自然を破壊し、更には地球環境を損なってきた。
そのしっぺ返しは来ているし、我々も何時バスタブ島の人々のような境遇になるとも限らない。
この映画は、そんな現実の絶望的な状況を打破するように、一人の少女の内なる生命力の強さに光明を見出そうとしている。
どんなに辛く先行きの見えない状況でも、歯をくいしばり、力こぶを作って凛と野獣のように立ち向かって生きようとするハッシュパピーの姿に、私は希望や勇気を強く感じた。