結局カレー

そして父になるの結局カレーのレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
3.7
父親になることがどういうことか。何不自由なく暮らせるように休日返上で働いて躾をきちんとすることか、子どもたちの遊びに全力で付き合ってあげることか。でも本当に大事なのは「子どもに何をしてあげるか」じゃなくて「子どもとどう向き合い続けたか」なのかな。向き合うって1回きりの話じゃなくて、蝉が羽化するまで15年かかったように、持続して共に育っていくこと。自立した子に育てたいと息子から距離を置いていた良多に「子どもは時間。」と言い切った電気屋パパには私もハッとさせられた。

その大切な時間、それも生まれてからの6年間を共に過ごしてきた息子が、血のつながらない息子だったと知ったら。血のつながった子をこれから心から愛することはできるかもしれないけど、この6年をなかったことに、なんてことはそう簡単にできない。「このままふたりでどっか行っちゃおうか」という言葉が、父親を頼りきれず必死で息子と向き合ってきた母親の切実な本音だよなぁ。
でも良多も他の親に比べて淡白にみえるけど、自分自身が血のつながった母親に会うべく家を逃げ出した過去や血のつながらない父の再婚相手を「お母さん」と呼べない現在があるから、子どもの立場にたった選択をしようとしてたんだと思う。どっちの答えも正解とは言えないし、決して間違いじゃない。

やんちゃで強がりな琉晴が星空をみて「パパとママの場所に帰りたい」と涙していたこと、物静かでいつも言いつけを守る慶多が「パパなんかパパじゃない」と悲しみを言葉にしたこと。6歳にだってもう代替えのきかない家族になっていて、最後の決断は明示されていないけど2人の息子と向き合った上でこの6年間をなかったことにしない選択をしたんだと思う。
人は子と向き合って親になる、また親になるときがきたらみてみたい。