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そして父になるのtoriten45のレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
4.1
心がずっと動かされっぱなし。絶妙な手さばきで作り手の狙い通りに、感情を操られてた感じです 。映画を楽しむ満足感いっぱいでラストを迎えることできました。

この都会の裕福な家族を中心に描いている作品の空気感が、故エドワード・ヤン監督の『ヤンヤンの夏休み』('00)に似ているなー、て思ってネットの記事読み漁ってみたら、是枝裕和監督はエドワード・ヤン監督に対してだいぶ関心が高いみたいに見受けられました(やはりそうなのかな)。

病院での赤ん坊の取り違えが6年後に発覚するというあってはならない悲劇を題材にしながら、人と人の心の距離が近づいたり離れたり繋がったり断絶したりする表現がとても素晴らしいと感じました。嫌悪、もどかしさ、卑屈、不満など自分の心に潜む負の感情が巧みな演出によって呼び起こされて共感に繋がる。これこそが映画でしか得られない体験なんだろうねー、と思います。

ジャケ写に並ぶ6人それぞれが最初に登場する際の印象づけを丁寧に描いているのも効果的だったと思います。そして、この第一印象がストーリーの進行とともに変わっていくからずっと見入ってしまう。

まず福山雅治が演じる父親はいわゆる勝ち組で、これがまたイヤーなヤツ。そして、この世間体重視の彼を中心にストーリーは展開していきます。相手のパパ、リリー・フランキーには嫌悪感丸出し&常に上から目線。2人の間に大きな壁を感じさせる出だしの演出がその後の変化につながる大事なところなのですね。なので気分悪くなること多々ありましたが、このムカムーカは必要でした。

一方のリリー・フランキー。決して裕福ではなさそうだし、妻の顔色を常に伺ってそうだし、病院から金をふんだくることしか考えていなさそうだし…。そりゃーマウント取られちゃうよ。でも情けない父ちゃんに見えるけど家族を一番に置いている。だからみんなから慕われている。

私が好きなシーンは福山パパによる“こんなところでそんなこと言うか!?”と思わせるドン引き発言の流れでリリーパパが福山パパの頭をぺちって叩くところ。迫力がゼロで笑っちゃいそうだけど本当に怒っているのが伝わってくるのがいいですね。逆にブン殴ってたらあそこまでの緊張感は出ていなかっただろうなと思いました。

いつかまた再鑑賞してみたいです。
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