うめ

クロニクルのうめのレビュー・感想・評価

クロニクル(2012年製作の映画)
3.0
 昨年のリブート版『ファンタスティック・フォー』の監督を務めたジョシュ・トランクの長編映画一作目。超能力に目覚めた3人の少年たちの様子を、モキュメンタリーの一種であるファウンド・フッテージ方式(撮影済みの映像が発見されたという設定でフィクションを製作する方式)で描く。低予算ながらも、北米でヒットし話題を集めた作品。ようやく鑑賞。

 内気な青年アンドリューはカメラ撮影が趣味の高校3年生。家庭環境はあまり良くなく学校でもいじめられる毎日で、知り合いはいとこのマットだけ。だが、ある日マットに誘われて行ったパーティ会場の近くの空き地にあった地下空間に入ったことで、物を自在に動かせる力を手に入れる。その場にいたマット、高校の人気者のスティーブも同様の能力を手に入れ、3人で能力を使っていたずらして遊ぶようになる。3人が親しくなり、アンドリューも明るくなっていったのだが、ある出来事から少しずつ関係が崩れていく…。

 高校生の日常を描く方法として、ファウンド・フッテージ方式は有利に働いていたと思う。現代は誰でもスマートフォンなどで動画を制作して公開できてしまう。今作のアンドリューもそれを趣味にしている若者である。超能力で車やぬいぐるみを遠隔操作して遊んでいる映像を、どこにでもいる現代の高校生のパーソナルな動画の一つとして、日々の日常の一つのように描き出している前半のパートは興味深かった。だが、一つ最後まで気になったのが、「これらの動画を編集している人物は一体誰なのか」という点である。例えば、先日観た『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』というヴァンパイアの共同生活に密着するモキュメンタリー作品はヴァンパイア達に取材班がついているという設定が冒頭でなされたし、ヴァンパイア達もその体でカメラに向かって語っている。だが、今作は確かに撮影者は劇中でわかるのだが、明らかに映像をそのまま流しているのではなく、集められた映像を編集している。実際、アンドリューが撮影した映像だけでなく、同じ高校生のケイシーが撮影した映像や防犯カメラの映像も登場し、ストーリーの展開や状況に応じて映像の切り替えがなされている。例えば、これが普通のフィクション作品でカメラマンが撮った映像ならば説明なしに切り替えが行なわれていても何ら問題はない。そこには監督という「神の視点」が存在しているからだ。だが、今作は撮影者と編集者が異なる。誰がどういう意図を持って、この出来事の顛末を描き出そうとしたのかがわからないため、結局ストーリーのどこに力点が置かれているのかも曖昧なままだ。その部分をもう一歩踏み込んで作って欲しかったところ。

 ストーリーに関しては、特に後半が既視感満載だったのが不思議で「なんでなんだろう?」と思っていたら、今作が影響を受けた作品のタイトルを見て納得。確かにとってもよく似ています(笑)ここでは敢えて書きませんので、ご覧になって確認してみて下さい。そういう意味では、寄せ集めなストーリーなのだけれど、わかりやすくしようとしたら、まぁこうなるのかな。

 ただ登場する3人の高校生役の俳優がいい。デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダンの3人。特に注目したいのは、アンドリュー役のデイン・デハーン。序盤内気でオタクな雰囲気の彼が、超能力を持って自信をつけると鋭い目を見せる。なかなか惹き付けられる表情だと思う。既に話題作に出演している人もいるけれど、皆それぞれの活躍に期待。

 モキュメンタリーを好んで観ないせいか、私は違和感を感じる部分が多かったのだが、見慣れている人だともしかしたら楽しめるのかもしれない…。
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