横溝正史による原作において金田一耕助デビュー作。本作を低予算ながら良質な作品を送り出していたATGが製作したが、その設定の工夫も、その作品が持つ雰囲気も良い方向にいったと思うね。
金田一耕助は、あの中尾彬がヒッピー風な風貌で石坂浩二の書生的な格好と異なる所も非常にユニーク。そして旧本陣の跡取りである被害者となる一柳賢蔵を演じる田村高廣の存在感が素晴らしい。インテリで強い信念を持った一家の主人ではあるものの頑固でナイーブ、外見からは何を考えているか計るのが難しいというキャラを見事に演じている。
また一柳鈴子を演じた高沢順子も強烈な印象を残した市川崑監督による一連の作品とはまた異なった雰囲気を持った隠れた名作と言えるだろう。
