複雑な人間関係による怨恨、日本家屋の構造を利用した殺人と横溝作品のテイストを残しつつも独自の映像美に昇華した高林監督の手腕の見事さよ。大映スタッフによるサポートが低予算作品とは思えない重厚で奥行きのある画面となって映画に品をもたらす。
でも戦前が舞台だった原作を無理矢理製作当時の現代に変更したためか物語に旧家のしきたりや主人の存在など現代にそぐわない設定がちらほらと見受けられるのが惜しい気がする、お話も殺人までの2~30分は嫌な雰囲気がちらほらと出て来てミステリーらしくなり盛り上がるがそのあとの展開は普通の推理ドラマになるのでちょっと盛り下がる。
役者陣では水原ゆう紀と高沢順子、二人の対照的なヒロインが印象に残る。旧家の主人らしい威厳と不気味さを醸し出す田村高廣も最高。
賛否両論に別れるヒッピースタイルの中尾彬の金田一耕助だけれど、原作の金田一もアメリカ帰りで一時期麻薬に溺れていたことを考えると個人的にはありかなと思ったりする。
終盤事件の真相を語る金田一を彩る夕景の映像が美しい。