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マチェーテのkaomatsuのレビュー・感想・評価

マチェーテ(2010年製作の映画)
3.8
『マッドマックス』やチャールズ・ブロンソン主演作を彷彿とさせる、悪の組織によって家族を殺された男の壮絶な復讐劇。さらに、不法移民問題を織り交ぜつつ、グロいスプラッターやお色気などがこれでもかというほどてんこ盛りの、カルトな人気を誇るB級クライム・アクションだ。ずっと気になっていた作品で、いかにツッコミどころを探して楽しめるか、期待して臨んだのだが…。

メキシコの連邦捜査官マチェーテ(ダニー・トレホ)は、巨大な麻薬組織の親玉トーレス(スティーヴン・セガール)の罠にかかり、妻と娘を殺される。その3年後、マチェーテはアメリカのテキサスに不法入国していた。そんな矢先、ブース(ジェフ・フェイヒー)という男から声がかかる。それは、メキシコからの不法移民を容認しないタカ派の保守議員マクラフリン(ロバート・デ・ニーロ)を暗殺せよとの依頼だった。依頼を引き受け、いよいよ暗殺決行の日、マチェーテがターゲットに銃口を向けるや否や、マクラフリン議員は別の何者かに足を撃たれる。一転して容疑者の濡れ衣を着せられ、追われるマチェーテ。それは、不法移民に狙われたという既成事実を作ることで、アメリカ人の国民感情を移民政策反対へと誘導し、支持が低迷したマクラフリン議員の人気を取り戻そうという、側近の何者かが仕組んだ巧妙なシナリオだった。その黒幕を暴くべく、マチェーテは米移民局捜査官のサルタナ(ジェシカ・アルバ)や移民を支援する女戦士ルース(ミシェル・ロドリゲス)らと共に反撃に出るのだが、その黒幕とは…。

おバカでトンデモなC級以下の路線を期待していたのだが、首がスパスパちょん切れたり、内臓ドバーのかなりグロい殺戮シーンがあったり、死んだはずの人間がさりげなく蘇っていたりする以外は、復讐劇としての明快なプロットや、見どころ満載のアクション・シーンなど、思いのほかきちんと作られた、上等なアクション映画だった。出演者も超豪華で、もはやB級などと言うのは失礼なくらい。『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』などにも通じる、第一級の3歩くらい手前のチープ感は、あえてのベタな復讐劇としてのストーリー展開に加え、主人公のマチェーテを演じるダニー・トレホの存在感によるところが大きい。本来ならば、超極悪な脇役しか回ってこないような、岩山のようにゴツゴツした風貌のダニー・トレホが、昨今のヒーロー像を逆手にとったように、無骨なマチェーテを演じている。いや、マチェーテを“生きている”と言ったほうが正確かも。その実存感は、何もせず、何も喋らず、ただ立っているだけで、凄まじいレベルだ。チャールズ・ブロンソンがハイパーに進化したようなダニー・トレホが、「メールくれればよかったのに…」と言うジェシカ・アルバ扮する捜査官サルタナに対して、「マチェーテ、メールしない」と、なぜか“インディアン嘘つかない”風のカタコトぜりふになってしまうのがおかしいのだが、そんなマチェーテが妙に昔気質でカッコよく見えてきてしまったからには、シリーズ2作目の『マチェーテ・キルズ』に続くしかないようだ。
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