ユミコ

暗闇から手をのばせのユミコのレビュー・感想・評価

暗闇から手をのばせ(2013年製作の映画)
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身障者専門のデリヘル嬢の、とある日常が描かれた映画。通常のデリバリーヘルスのお仕事よりも、それは大変なのだろうと思うところだけど、彼女曰く、怖いことをされる心配がないから安心だって。以前は通常のデリヘルの仕事をしていた彼女の、ある客の男に乱暴な扱いをされたり、ストーカー行為をされていた苦い経験からの今の気持ちなのでしょう。
基本、店長の男性が女の子を仕事現場に送迎しているが、身障者のお客を車イス等からベッドに移動してあげる役割は女の子1人だけでは無理なので、プレイの手前まで店長も同伴する。2人で移動などの下準備を終えると「では、宜しくお願いしまーす」と店長は去って行く。身障者専門の風俗は実際もこの流れなのだろう。観ていると、映画の中のお話なのではなく、リアルに必要な職種だと感じていく。本作では身障者の方々は、若い男性やお洒落なイケメンだったりしてキレイに描かれていて、現実離れしがちだったり物足りなさがあったが、お客の1人としてホーキング青山さんのご登場によって、リアリティを感じる事が出来たし、普段はにこやかなイケメン店長も、仕事の上で不都合な事が起きたりすると女の子にキツい態度を見せるあたりも、リアリティがあった。客の中の若い男子が、自分の不自由な身体からの今の境遇に耐えられず自殺をしようとした際、デリヘル嬢であるヒロインが必死で彼を説得し「あたしのために生きて!」と。こんなシーンも、キレイ過ぎて(ここら辺が、これはラブラブでジ・エンドかな。ありきたり過ぎ… と先を読んでしまう)つまらなささえ感じたけれど、そうではなく、次のカットではヒロインが「また今度お店にメールして、あたしを指名してね。」などと、何事も無かったかのように語りかける言葉が、お伽話や感動的な恋物語で終わる事なく、現実的。そこが良かったし、作品そのものにも好感が持てるように。ただ、タイトルやキャッチコピーで語られている言葉の重要性は、作品内ではほとんど感じられなかった。
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